石の2 秋田への旅


なまはげ1 秋田に関しては当初、ナマハゲ、きりたんぽ、
くらいしか知らなかった。
 しかし、優子の母の実家が湯沢市であり、
優子の兄夫婦が、秋田市に住んでいるので、
ちょくちょく行く機会が出来た。

春に湯沢まで車で走ったことがあるが、
国道の鬼首(おにこうべ)道路というのがよかった。
スキー場やキャンプ場のある「鬼首」から、峠を越えて、
山道の美しい「秋の宮」地区を下り、それに続く平野を流れる
雄物川(おものがわ)沿いを走るのだが、どこもかしこも
見惚れるばかりの風景だ。
川沿いに延々と続く、柔らかい若芽の木を何というのか、
ヤナギ科だろうが名前を知らないので、ぼくらはずっとそれを
「あのポヨポヨはきれいだねえ」と呼んで感動しっぱなし。

こまち2 湯沢への途中に、雄勝町(おがちまち)というのがあり、
ここは、平安時代の女流歌人であり、美人の代表とされる、
小野小町(おのの・こまち)の出身地だという。
「小町記念館」があり、6月の祭りでは、選ばれた秋田美人が
平安時代の衣装で町を練り歩き、観光名物になっている。

その夏、二人で秋田県の「田沢湖」にキャンプに行った。
九州人は「十和田湖」は知っているが、田沢湖は知らない。
行ってみると、なかなか大きな湖であった。
考えてみれば、九州には湖がないのだ。

そこに行く途中の秋田県内に、横手市というのがある。
雪で作る「かまくら」が有名である。観光名物である。 ゆえに、
市内には「かまくら会館」というのがあって、夏でも
「かまくら体験」を出来るように、大きな冷凍室内に一年中、
かまくら1 かまくらが作ってある。観光客は、入り口で「綿入れ」を着て、
呼吸を整えて、零下の室内に入るようになっている。
引き戸の重くて厚い金属の扉を開けて入るのだが、間違って
挟まれれば腰の骨が砕けそうである。
中に入ってほおーと感心したが、あまりの寒さに1分で出てきた。

 その横手市の名物は、かまくらと、もう一つが「焼きソバ
だそうだ。焼きソバがどーした?と言いたくなるが、
長崎人が帰省するとまずチャンポンを食べたくなるように、
横手出身の人間は帰省すると、まず焼きソバを食べたくなるという。
上に目玉焼きと福神漬けが乗っているのが特徴らしい。
 観光物産館に置いてあったミニコミを読むと、
「横手の焼きソバが町おこし名物として、全国にこれほど
フィーバー するとは…」と書いてあったが、おいおい、全国どころか、
東北に住んで5年、横手に来て初めて知ったんですけど。

その横手市から国道を北に進むと、「中仙町」というのがあるが、
ここもおもしろかった。「ようこそ中仙町」の看板の下に、
ドンパン節のふるさと」と書いてある。 ドンパン節!?といえば、
秋田3 ぼくも昔からよく知っている「どんどんぱんぱん、どんぱんぱん…」
から続くあの有名な変な歌である。これこそ全国的に知られている。
民謡とコミックソングの中間のような、ノリの良い歌なのだが、
それが、この町の大工の高橋市蔵さんが、明治時代に作った歌
なのだという。
中仙町では、毎年8月にドンパン広場で「ドンパン祭り」が行なわれ、
ドンパン節に合わせて町民がドンパン踊りを踊るのだそうだ。
道の駅のパンフレットには、その歌詞と共にドンパン踊りの振り付けが
イラスト入りで描いてある。それをもらって、車中で優子が歌詞を
見ながら歌ってくれたが、要するに、秋田の郷土自慢の唄なんですね。
秋田は米がうまくて、酒がうまくて、美人も多いという…。

そう言えば、秋田で有名な民謡に「秋田音頭」というのがあるが、
秋田4 これもほとんど、秋田礼賛のオンパレードである。
「秋田名物、八森ハタハタ 男鹿で男鹿ブリコ……
ハア、キタカサッサ、ドッコイサッサ、ドッコイサ」
これはノリがよくて、聞いてるだけで実に楽しくなるもので、
民謡というよりは、ほとんどラップ・ミュージックである。
しかも、歌詞が笑いを誘うようなものばかりで、踊りも付くので、
是非、ナマで聞いてみたいもんだ。

優子の解説によると、秋田の民謡の明るさは、豊かさのせいだと言う。
たしかに、波の荒い太平洋側の東北と違って、日本海側は、昔から
京都と繋がる「北前航路」が発達していて、貿易がさかんだったのだ。
(1998年)

石の4 もどさもどるんし