石の2 オクトーバーフェストに行ってきた

ビール1 ドイツからやってきたビールの祭典「オクトーバーフェスト」が
日本の主要都市に根付いてから、もう10年以上は経つだろうか。
仙台で初めて行った頃は、炎天下で、ドイツの楽隊もトラックの横を
開けて舞台にしていたが、今や、公園にサーカスが出来るくらいの
テントを張って大々的にやっている。オクトーバーフェストというくらい
で、ドイツでは10月にやっているのだろうけれど、気候の違いがある
日本では必ずしも10月ではなく、6月にやったり、9月にやったりして
いる。でも、ドイツがビールの本場であり、そのミュンヘンでのビール
祭りはよく映像で見ていたので、あの祭りが日本でも味わえるのかと
思うと、これは魅力である。

確かに陽気なのである。ドイツ人のおっさんの楽隊が、にぎやかな
音楽を奏で、みんなで乾杯を繰り返し、他人の肩に手を置いた行列が
場内を歩き回る。それがあちこちでハイタッチをする。日本人でも乗り
の良い人はけっこういるもので、毎回盛り上がっていることに感心する。
さらに、何しろ、売店では本場ドイツの様々なビールを売っているし、
本場のソーセージや、肉料理を売っている。最初の頃はこれが楽しみ
だった。日本のモノとどう違うのかという興味である。ところが…。

ビール2 ドイツのビールといっても日本のビールよりも、必ずしもうまいものでは
ないし、ドイツのソーセージといっても、日本のものより必ずしもうまい
とは限らないのである。これは意外だった。あちらのマイスターがこれは
おいしいと保証しているものを食べたのであるが、ぼくはこちらのスーパー
でよく買っているシャウエッセンの方がよっぽどおいしいと思った。
それを妻に言うと、あなたは安物の味に慣らされていると言われた。が、
必ずしもそうではないと思う。ヨーロッパのソーセージは、本場だから
おいしいとは限らないのである。

例えば、スウェーデンから日本に進出してきて、全国展開をしている人気
の家具チェーンに「IKEA」がある。安くておしゃれで、いろんな小物もある。
その中に、簡単なレストランもあって、ホットドックを売っている。うわあ、
うれしいと思って食べてみた。ところが、パンはともかく、ソーセージの味が
ひどいのである。旨みが何もないのである。よくこんな何の味もしないもの
を平気で売っているなとあきれてしまう。とにかく、ソーセージもビールも、
日本の職人にかかると、いつの間にか本場と競うようになり、中には本場
の味を凌ぐものまで出てくるのである。ソーセージに関しては、ヨーロッパ
のコンクールで金賞を取ったという職人が日本にはたくさんいるのだ。
ビール3 そしてウイスキーはもっとすごいことになっている。ウイスキーの本場は、
元々イギリスのスコッチや、アメリカのバーボンである。ところが今や、
世界中の品評会で毎年のように金賞をさらっているのが日本のウイスキ
ーであり、日本は今や、ウイスキーの一大産地になってしまったのである。

それはともかく、ドイツビールを売る売店では、日本人の若いお姉さんが
ドイツ風の古典衣装を着て店頭に立って、笑顔を振りまいているのだが、
ある時、彼女らがいきなり胸の谷間を強調するようになった。多分、
現地を忠実に再現しようと、上の方で誰かが発案したに違いない。
どの店に行っても、胸の谷間が迎えてくれるので、こちらとしてはやはり
ドギマギである。ところが、翌年行ってみるとまた普通に戻っていた。
多分、賛否両論あって元に戻ったのだろう。残念である。

それにしても、オクトーバーフェストの魅力はやはりその独特の文化である。
ヨーロッパの中では堅苦しい性格のドイツ人がこんなに陽気になるのも、
不思議なのだが、ビールとソーセージと音楽のおかげなのだろう。
(2018年9月)

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