石の2 観光ミステリー推理ドラマ


どらま1 テレビの2時間ドラマとして、この手の番組が
定番となって久しい。
どこぞの観光地を舞台に、殺人事件が起こる。
主人公はその犯人を推理して、突き止める。
主人公は、旅行会社の添乗員だったり、
カメラマンだったりと、あれこれ。
愛川欣也やら、片平なぎさ、船越英一郎だのが
配役の常連である。

リアリティには全く欠ける推理ドラマだが、
日本全国の観光地を選んでいるので、
けっこう人気がある。
『長崎おくんち殺人事件』という題名だと、
ぼくだって、ついつい、チャンネルを回してしまう。
「お!どこが写るかな?」という興味である。
そして、期待通りの場所はたいてい、無理やり、
まんべんなく出てきます。

長崎の場合なら、主人公たちは必ず、
眼鏡橋の上で、会話をすることになっている。
「じゃ、ちょっと調べてくる」と別れた後、
次に落ち合うのが、稲佐山の展望台である。
おいおい、わざわざロープーウェイで登ったんかい?
そのすぐ後で再び落ち合うのが、今度は、
対岸のグラバー亭の庭だ。
まるで、瞬間移動である。
それでも、長崎出身者はうれしい。
長崎に観光で行った人も、なつかしい。
つい、長崎の母に電話をかけたりする。

どらま2 宿泊するホテルも、宣伝になるので、
ロケ・メンバーの滞在費をタダにしてくれるし、
主人公たちが、あるカステラ店に行って、
カステラを食べて「おいしいねえ」と言えば、
そこからの協力金ももらえる。
カステラのおみやげまで、持たしてくれる。

それはいいんだけれど、
ドラマとしても、ワンパターンのオンパレードである。
例えば、殺人事件の場合、刑事さんは関係者の
事情聴取をするわけだが、この手のドラマでは、
刑事が「あの時間、あなたは何をしてました?」と
普通に聞こうとするだけで、
「何よ、あたしが犯人だっていうの!冗談じゃないわよ」
と怒り出す人物が、必ずいるんですね。
あのですね、普通の市民は、そんな反応は、
しませんて。

そして、最大のワンパターンは、ドラマの最後。
主人公が犯人を前に、「あなたが、犯人だ!」と
追い詰める時、なぜか、たいていが海辺なんです。
しかも、絶壁断崖の上が多い。
そして決まって、犯人に背を向けてしゃべる。

相手に背を向けてしゃべるというパターンは、
NHKの大河ドラマが、やたらやりますね。
ふっと立ち上がって、縁側に立ち、
庭や、空を見ながら、とうとうとしゃべる。
後ろにちゃんといて、聞いててくれてるのか、
心配にならないんでしょうか?
ふっと振り返ったら、あくびしてたり、
あるいは、誰もいなかったりして。

しかも、ミステリードラマでは、断崖絶壁で
それをやるもんだから、時として犯人は主人公に
飛びかかって殺そうとします。断崖だし。
すると主人公は「きゃー!何するの!」
どらま3 と叫びます。何するもなにも、ああた、
自分の悪事を暴いた人間が、自分に背を向けて
断崖の上に立っているんだから、突き落として
みたくもなるでしょうが。

ところが、たいていは、タイミング良く、
刑事たちが「待て!」と叫びながら、走ってきて、
犯人は捕まるのです。
背中を向けて推理に酔ってる主人公を
さっさと突き落として、立ち去ってれば、
捕まることもなかったのに、
何をボサっとしとるのか?

そして、事件が解決すると、最後に主人公たちは、
何人も人が殺されているにもかかわらず、
楽しかったあ、みたいに、ほがらかに笑って、
観光地を去るのです。たいてい、快晴です。
水戸黄門と、どっこいどっこいです。
そういえば、水戸黄門の中で、人気のある、
由美かおる演じる「お銀」の入浴シーンは、
だいたい、8時37分頃と決まっているそうです。

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