石の2 庄内映画村


映画村1 山形県の庄内地方といえば、時代小説家・藤沢周平の故郷であり、
 彼はそこを舞台にして多くの小説を書き、また映画化されている。
「たそがれ清兵衛」「蝉しぐれ」「武士の一分」「山桜」などが有名だ。
そのため、現地でロケが行われたり、オープンセットが作られたり、
それを壊すのが惜しいと、しばらくの間、観光客に公開したりしていたが、
ええい、こうなったら時代劇のための映画村を作ってしまえというわけで、
山形県内の101の企業と個人が株主になって株式会社を
作り、月山山麓の自然豊かな石倉地区に26万4千坪という土地を
確保し、宿場町、農村、漁村などの江戸時代のオープンセットを
作ってしまった。それが「庄内映画村」である。

京都の太秦と違うのは、太秦があくまで江戸の町屋や武家屋敷を
なぞらえているのに対して、こちらはあくまで田舎の村であるということだ。
そして山形県の山沿いなので、冬になると必ず雪に隠れてしまう
豪雪地帯でもある。雪の風景のロケにも自由に使えるのだ。
ここでロケした映画をあげると、「ジャンゴ」「座頭市THE・LAST」
「十三人の刺客」「デンデラ」その他、けっこうある。
そして、今では撮影の合間を縫って、1600円の入場料で一般客に
公開している。ぼくらが行ったのは、2009年の8月に公開されて
すぐだった。

細い山道を車でしばらく進むといきなり、江戸時代の砦が現れて、
映画村2 舗装していない広い駐車場が現れた。入口のゲートでは、武士や
忍者の衣装を着たスタッフがにこやかに迎えてくれる。
 ロケ弁当を売っているというので、どんなんだろう?と期待して
買ってみたが、単なるカレーライスなので少しがっかりした。
園内は広く、ミニバスが巡回しているが、どちらかといえば歩く方が
散歩気分でずっと楽しい。本当に田舎の自然そのままの山裾であり、
どうにでも使える土地である。ただ、田舎の旅籠町、農村の風景、
漁村と庄屋の屋敷などが、南北に離れて実にうまく造られている。
ぼくはこういう映画のオープンセットを見るのが大好きなので、
もうワクワクしながら歩きまわりデジカメで撮りまくった。

漁村エリアに行くと、道には貝殻の破片が撒かれてあり、舟があり、
魚網がそこここに干されているのだが、その向こうは野山。
そこでは香取慎吾の「座頭市THE LAST」が撮影されたばかりで、
ぼくは、ただその撮影処理の興味だけで、映画を観に行ったのだが、
なるほど、漁村の向こうに広がっていた野山は見事に映像処理され
白波が打ち寄せる海岸になっていて、ユリカモメが建物のそばまで
 飛んでくるのである。はあ!と感心してしまった。

映画村3 旅籠町はこれまた映画「十三人の刺客」が撮影されたばかりで、
障子には血糊がついていたし、爆破されて傾いている家もあった。
 ただ、重厚に見えた蔵の家も裏に回ると、ベニヤの部分もある。
 役所広司が主演のこの映画も満を持して観に行ったが、なるほど
 セットを存分に使っている。太秦ではこうも火薬を使えまいと思う
山形の田舎の山裾の広い自然の中だから、これだけ派手にやれる。
 この庄内映画村の敷地内の道は当然ながら、みんな未舗装である。
歩きながら、砂利道の所々に野性の柳の木があちこちに生えて
いるのを見て、どうもこの土地は扇状地であり、元々は河原なんだと
 気付いた。だから、住宅地として整備するには不適であり、そのせいで、
安く広々と購入出来たのではなかろうか。想像だが…。
とにかく、昭和以前の田舎の風景のロケ地としては最適で、現在の
FX技術を使えば、いろんな加工も出来るので大いに活用してもらいたい
ものである。


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