石の2 えさし・藤原の郷


えさし1 今年のNHK大河ドラマ「義経」は、またまた
史実はめちゃくちゃで、アイドルタレントを並べて
視聴率稼ぎを狙った、安っぽいものだった。
その演技ときたら、目も当てられないくらいに、お粗末。
まるで、中学校の学芸会並みである。
それはともかく、その主要なロケ地となっているのが、
東京からはるばる離れた、岩手県にある、
えさし・藤原の郷(さと)」という、歴史公園である。
岩手県・江刺(えさし)市の郊外、緑深い田舎の中に、
20ヘクタールの土地を使い(東京ドーム4個分の広さ)
平泉・藤原三代にちなんだ建物群を再現している。

京都の太秦のような、映画会社の撮影所ではなく、
観光施設なのだが、映画やテレビのロケに協力的で、
NHK大河ドラマのロケに再三、使われている。
「炎立つ」「利家とまつ」「秀吉」「毛利元就」「北条時宗」
映画では、「陰陽師」など。
地元では、撮影に協力する態勢を、市ぐるみで整え、
多くの市民がエキストラで参加しているという。
ロケが多ければ、観光客も増えるし、市民もうれしいいし、
結構、楽しんでいるようである。

おもしろそう、一度は行ってみようと、車を走らせた。
太秦(うずまさ)には、昔、二人で行ったことがあるが、
あちらは、江戸時代中心の街並みセットだったのに対して、
えさし4 こちらは主に、平安時代の屋敷や街並みを
骨太に再現している。

入場料800円。太秦と違って、自然が多い。
自然散策の散歩としても、なかなか楽しい。
薄暗い林の中に、栗の木があり、栗の実が道に、
散らばっていたりして、なかなか奥行きも深い。
ふと、開けた広場に、小さな田んぼがあって、
なにやら貧相な小屋があるな、
と思ったら、「秀吉」で使われた、日吉丸の生家だった。
中に入ると、秀吉役の竹中直人の、等身大のパネルが
囲炉裏の横に立てかけてあった。
ぼくがその横に立って、妻がパチリと写真に撮った。

さらに道を行くと、戦国時代の砦が、突然現れ、
これもNHK大河ドラマで、よく見る絵である。
ここでも、ぼくが砦に登り、それを見上げて妻がパチリ。
さらに先に行くと、平安時代の屋敷の塀が続き、
屋根に石を乗せた平民の小屋も並んでいる。
「いらっしゃいませ!」と声が飛ぶ。
実は、みやげ物屋になっていて、平安時代の
格好をした店員が、笑顔で呼び込んでいるのだ。

時には、馬に乗った観光客がゆっくりと広小路を
引き手に連れられてゆく姿もある。
貴族の屋敷は、靴を脱いで、その内部をあちこち
眺めて見られるようになっている。
この重厚で長い廊下を、ある時は、
藤原秀衡役の渡辺謙が歩き、ある時は、
平清盛役の渡哲也が歩いたのだ。
そして、廊下の前の広い池には、錦鯉が泳いでいて、
売り餌を投げると、鯉のぼりのように口を開けて、
群れが一気に、折り重なるように陸に押し寄せてくる。
あまりの迫力に、子供がのけぞっていた。

近くの山河では、合戦シーンも撮るらしい。
えさし5 地元のみなさんが日当6千円で、朝7時から夕方5時まで、
鎧を着て、走り回る。拘束時間も長く、重労働なのだが、
みなさん、非日常を楽しんでいるという。
田舎を、こういう風に活かせる施設は、
なかなかのグッドアイデアだと思う。
今年5月の、平泉の「春の藤原祭り」では、
平安時代の行列の中に、義経役をやった滝沢秀明が
そのまま馬に乗って加わり、盛り上げるという。

ちなみに、隣の秋田県では、秋田市内に近々、
秋田出身である黒沢明監督を記念した、
黒沢映画村」の構想があるという。
黒沢作品の中のロケ地風景をそのまま再現
する意向だという。これも楽しみである。
(2005年3月)

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