石の2 山里で養殖されたフグを食べてきた


ふぐ1 フグといえば下関、しかも海で育つもの、と思っていたが、
驚くべきことに、宮城県の内陸にある栗原市が、
それを山の麓に設けた水槽に海水を運んできて
養殖を始め、それが大成功しているという。
もう既に東京や大阪にまで出荷していて、それならば
地元の名産として売り出そうということで、とりあえず、
「トラフグ弁当」を、付近の高速道路の3つのSAで、
2008年3月から売り出した。980円である。

しかも、仙台から北にある、長者原SAでは、
20食限定で「トラフグ御膳」というメニューも作ったという。
それが安くてかなり贅沢だというので、ぼくはいきり立った。
2008年3月16日の日曜日の朝9時、ぼくらは仙台南から
高速に入った。鶴巣SAで売り場を見渡せば、おお!
ふぐ2 トラフグ弁当がたくさん売っている。即、購入。食べる。
炊き込みご飯である。ダシが利いている。うまい。
次にトラフグ御膳を目差した。これは長者原SAの上りの
レストランでしか出していないので、仙台から行くと、
その先のICで降りて、Uターンして再び高速に入らなければ
ならない。そうやってまでして、ありついた御膳は豪華だった。
ふぐ刺しの厚切りが五つも巻いてあり、唐揚げは三つ。
アラの汁物の他に、わっぱ飯の上にはネギを巻いた刺身、
そしてキノコがたっぷり、そして地元の漬物と、ずんだのデザート、
食後のコーヒーまで付いて、1460円。安い!

驚いたのは、唐揚げの身や、厚切りの刺身のタップリ感だ。
妻が「これって普通の料理屋で出したら、3000円は取るわよ」
と言ったが、本当にそう思う。不思議なのは、厚切りの刺身だ。
普通に薄切りにして、小皿に並べたら、それだけで900円は
取れると思うのに、どうして厚切りにするのだろう。
フグって、普通の魚と違うんだからさあ…。
そこでふっと気付いたのだが、東北というのはほとんど
ふぐ3 フグに縁がない土地柄だということだ。
御膳を紹介していたローカルニュースのスタジオの面々も
フグを食べたことがないという人が、半分もいるのである。
これには、ぼくもビックリした。

フグ刺しというのは、奥深いながらも微妙な味わいである。
だから薄造りにする。そして、鍋物にするとプリプリした
感触が良く、味自体は淡白だが、だからこそうまい!
よく、テレビのタレントが、薄造りの身を箸で、ざあーっと
幾つも重ねて食べていることが多々あるが、あれは実に下品な
食べ方である。田舎の成り上がりが、自分は金持ちだと
見せびらかしているように見える。一枚一枚、小ネギを
巻いて食べて味わって欲しい。

だが、果たして、これがマグロやタラなどの濃厚な味わいに
馴れている東北人の味覚に合うのだろうかと心配になる。
実際、秋田出身で、マグロの刺身大好きの、妻の母に、
ふぐ刺しを食べさせたことがあったが、首を傾げて、
「あまりおいしいとは思わない」と言っていた。
まあ、東京や西日本に出荷している分には商売に
なるだろうと思うので安心はしているが、地元でも
料理としてこのまま安く提供して欲しいと切に思う。
(2008年)

…2017年に同じ道の駅に行ってみたが、案の定、
 トラフグ弁当は消えていた。トラフグ御膳も消えていた。
やはり、東北の人にはフグは人気がないようだ。

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