2の石 冬の牡蠣、夏の牡蠣


  松島の牡蠣といえば、全国的に、広島の牡蠣と並んで有名である。
    「小粒だがうまい」と、優子からレクチャーされていた。
  ところが、スーパーで見る限り、けっこうデカい。どこが小粒だ。
  九州産の方が、はるかに小粒である。

  それはともかく、2月の第一日曜日に行われる「松島カキ祭り」がいい。
  広場に、炭を起こしたバーベキュー設備が
  百メートルも、ズラーっと並び、テント売り場で、
  水揚げしたばかりの殻つきの一袋500円の
 牡蠣を買うと、村起こしのお兄さん達が待ち構え
  ていて焼いてくれる。
   チラホラと雪が舞い、寒いのだが、アツアツの
  牡蠣がジューシーで、戸外で食べると、とても、
  うまいのだ。しあわせ。良いイベントだ。
   たくさんの人が集まるので、車はすごく渋滞する。
  電車でいく方が賢い。
  仙台駅から、JR仙石線(せんせきせん・仙台-
  石巻)というのがある。
   ちなみに、仙石線の列車のドアは自動ではない。
  自分でボタンを押して、開けなければならない。
  暖房が逃げるのを防ぐ北国の智恵である。
  時々、それを知らずにドアの前でボーっと立っている
  観光客がいる。

  牡蠣は冬の食べ物である。
岩がき   Rのつかない月には、食中毒を起こすので食べるなと
  言われている。
  ところが、東北には夏が旬のとても、おいしい牡蠣がある。
  山形や秋田など日本海で採れる「岩ガキ」である。
  マガキ並みにとても大きく、必ず殻付きで売られている。
  これがウマい。ウマいったら、ウマい
    これを知ったのは、東北に来てから2年目の夏だったが、
  翌夏には、これを食べたいがために、それだけの目的で、
  仙台から高速を飛ばして、山形県庄内地方の
  道の駅「象潟」までドライブしたこともある。

  しかし、夏の牡蠣といえば、思い出すのは、なんといっても、
  福岡時代の「ケガキ」である。
  特別な牡蠣ではない。九州の海にいけば、
  そこらへんの岩場のどこにでも、びっしりと付着している、
  岩と一体化したような小さな牡蠣である。
  とりたてて採る人もいないが、海水のきれいな場所では
  けっこう採った跡がある。
いわがき   本によると「マガキよりずっとうまいが、小さいし、
  はがすのもめんどうなので流通には乗らない」
  と書いてある。
   それではと、夏に海水浴場に行った時に、
  シュノーケリングをしながら、ナイフではがして、
  海水で洗って食べてみたら、これがうまい
  思うに、東北の「岩ガキ」というのは、
  このケガキがでっかくなったものではなかろうか。
  夏の暑い日差しの中、冷たいビールを飲みながら、
  生の牡蠣を食べるのは最高である。
  (1998年)


  (夏の岩牡蠣は当初、東北の日本海側の産物だったが、
  とても人気が出たため、2010年現在、東北の太平洋側の
  仙台や三陸でも養殖され、普通に出回るようになった。
  どちらかというと、冬の真牡蠣よりもデカい。そして、うまい)
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