石の2 映画「シン・ゴジラ」がとても良い


ゴジラ1 最新作のゴジラ映画の「シン・ゴジラ」を観てきた。大人になってからは
怪獣ものにはほとんど興味がなかったので、あまり期待してなかったが、
これが実に良かった。すごいと思った。ゴジラも高層ビルも戦車も
攻撃ヘリコプターも全てCG映像だという。着ぐるみのゴジラが歩いて
模型のビルディングを壊していた頃と比べると、なんという進化だろう。
ものすごいリアリティーである。ぼくは文句なしに褒めたい。第一作は
別格として、ゴジラ・シリーズでは、それに次ぐ最高の作品だと思う。

ゴジラの第一作は、昭和29年(1954年)に封切られた白黒作品だった。
誰も想像し得なかった独創的な怪獣映画の作品であり、特にその特撮
が世界的にも注目された。ぼくが観たのは10年後の小学生の頃だが、
とにかく怖くて、遠くからこちらに向かってくるゴジラの恐怖を夢でも見て、
脅えたほどである。とにかく、それが大ヒットして、次々と続編が作られる
ようになった。3作目からはカラー映画になり、壊される町やビルディング
がミニチュアであることが露わになり、恐怖感も薄れ、モスラやいろんな
怪獣が現れてくると、ほとんどそのエンターテインメントを楽しむように
なっていった。精巧なミニチュアを怪獣が壊すという快感はそれなりに
楽しかったのだ。ゴジラ・シリーズは、東宝の正月映画の定番になり、
ゴジラ2 ぼくが中学生の頃には、加山雄三の若大将シリーズと2本立てで上映
されることが多かったが、それと共に、作品の内容自体がどんどん軽く
なっていった。ついには、ミニゴジラが現れて、シェーをするようになった。
ここで、ゴジラ映画は完全に、子供映画になってしまった。ぼくは高校生
になったこともあり、怪獣映画はそれ以降観なくなった。

1998年にアメリカでゴジラ映画が作られた時にも、原作のゴジラとは
あまりにもスタイルが違っていて、ビデオで観たが、ガッカリしたもんだ。
しかし、CG技術の映像のリアルさというものには目を見張ったものだ。
そのうちに、日本映画にもこれが使われるようになり、特に、「三丁目の
夕日」に続いて「永遠のゼロ」では、日本海軍の空母が本物そっくりに
再現されていて、こんなことが出来るのかと興奮したものである。
そして「シン・ゴジラ」の予告編がテレビで流れるようになると、昔の怪獣
映画とはどうも違うような映像である。少しは気になっていた。しかし所詮
は怪獣映画だからと観に行く気もなかった。ところが、台風がやってきて
天気が悪かったので観に行ったのだった。すると、ビックリしたというワケ
だ。実にリアルなのだ。ストーリーも、昔のように、主人公がジャーナリスト
とその恋人で、一般人なのに勝手に自衛隊の隊長と肩を並べていると
いう風な荒唐無稽なものではない。また、アメリカのパニック映画ならば、
家族愛と、リーダー礼賛という啓蒙映画になるところが、この日本の映画は
ゴジラが実際に出現したら、政府の閣僚、官僚、自衛隊がどう対応するか
というシチュエーションがドラマの基本になっている。だから、サブタイトル
ゴジラ3 も「ゴジラ対ジャパン」なのである。これがよかった。

庵野監督は、その対策を実際に官僚などにシュミレーションしてもらい、
それに基づいて脚本を書いたという。そして、庵野監督がとても感心したの
が、官僚達の言葉使いがとても早口だというのだ。だから、映画でも監督は
俳優達に早口での丁々発止を強いたという。しかし、それを再現したという
映画を観ながら、ぼくは「ああ、やはり政治家を補佐する官僚達というのは
東大出身が主になるのは仕方がないよなあ」と思ってしまった。もちろん、
決断をするのは政治家である首相なのだが、彼に決断を促すのは官僚達
なのである。その構図を見事に描いていた。しかも、政府の決断には、
アメリカ政府の意向が大きな影響があるということも描いていた。なかなか
リアルな脚本である。

ただ最後に思うのは、配役のことである。石原さとみがなあと思う。彼女が
英語をしゃべると、TVでの英会話CMのイメージばかりが先行する。ああ、
これがきっかけで採用されたんだなと、つい思ってしまう。また、主人公役の
長谷川博己だが、もっと他に俳優がいなかったのかと思う。ま、そういうこと
は置いといても、ぼくは今回の「シン・ゴジラ」は、ゴジラ・シリーズにおいては、
第一作に次ぐ、最高のゴジラ映画だと評価する。
(2016年8月)


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