石の2 線香花火にも東西の違いがある


花火1 夏といえば、やっぱり花火である。
花火大会の打ち上げ花火もいいけど、
庭先で、みんなでやる花火がこれまたいい。

特に、長崎は、お盆の墓参りに花火をするし、
精霊流しでは、爆竹や火矢がつきものだし、
夏と花火は切ってもきれないもんである。
そして、花火の最後はなんといっても、
線香花火、で決まる。

それまで、華麗な火花でキャーキャー騒いでいても、
「さあ、しめは線香花火だ」となり、
家族みんなが寄ってきて、かがみ込み、
チリチリチリと続く小さな火花に、「きれいね」
と言い、もう終わりかなと思っても、まだ、
チュボ、チュボッと名残惜しく引くのが、愛しい。
そばに来た、浴衣のどこぞの娘が美しかった。

ところが、その大好きだった線香花火が
いつの頃からか、火花が弱々しくなり、
長持ちせず、すぐにポトンと落ちるようになった。
昔は、もっともっていたのに、と不思議に思っていたら、
実は、安い中国産が普及して、かつての
国内産が淘汰されたのだという。

花火2 今じゃ、日本全国、どこのスーパーや
おもちゃ売り場でも、中国産しか売っていない。
ところが、実は国産も細々と生産されているのです。
三河や、福岡の八女など、あるいは江戸蔵前に、
伝統を絶やすな!と、純国産を作っている業者がいる。
これが実に、プロジェクトX並みの感動秘話なのだが、
今では、インターネットの通販でしか買えない。
セットで4000円くらいするし。

でも、聞いたところによると、国産ものは、
やはり中国産とは全く違うという。
おう!これだこれだ、昔と同じだと感激するという。
大江戸牡丹とか、八女牡丹などの名品があり、
丁寧に袋に入れられて、今や高級品である。
これは、趣向のわかる人に、お中元で贈ったとしたら、
ずいぶんと、しゃれた贈り物になると思う。
花火3 三越あたりで、取り扱ってもおかしくはない
と思うのは、ぼくだけではあるまい。

ただ、線香花火をインターネットで、検索していて、
へえ!と、初めてわかったのだが、線香花火は、
西日本と、東日本では、形がまるきり違うのである。
中身は同じなのだが、外の見た目が違う。
西日本は、細いストロー(藁)の先に黒い固まり。
東日本は、和紙の色鮮やかな、こより型が普通で、
これって、意外に知られていないと思う。

ぼくは、九州だから、ストロー型しか知らず、
東京に来て初めて、こより型を知ったのだが、
それが調度、中国産に移行した時期だったので、
こより型の線香花火は、みんな中国産で、
粗悪品だと、勘違いをしていた。
だいたい、あんな頼りない紙だけでへらへら
しているし、安物なんだと、思っていた。

それを妻に話すと、ええっ!ストロー型?
そういえば、福岡で見たけど、あれって変よね、
花火4 揺れないでしょ、と言う。
線香花火は、和紙のこよりで作ってあって、
火花を出しながら、ゆらゆら揺れるのが本当で、
情緒があっていいのよ、と言う。
ついには、
「かわいそうに、あなたは本当の線香花火の
味わいを知らないのよ」、とまで言い出すので、
ぼくもぼくとて、
「何を言うか、あんな安っぽい紙のやつより、
ストロー型の方がずっとよか!」と、突然の
夏の夜の東西バトルになったのであった。




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