2の石 九州にはなかった山里の春の風景


仙台から山形にドライブするルートとして、
 蔵王の標高1600mの頂上付近をそのまま越えるという、
 素晴らしき山岳道路がある。「エコーライン」。
  よお、作ったもんだ。
 11月から4月までは雪の下に隠れているが、
 春になると、山形側、仙台側それぞれから、除雪車が
 掘り始め、5月のGWまでに車が通れるようにする。
 初めて走ったのが5月だったが、山肌には、削られて
 ミルフィーユみたいになった雪の壁が続く。すごい。

 その山頂を越えて、山形側に降り、里に近づくにつれて、
 山形の、里山の美しさにビックリする。
 思わず、ハンドルを間違いそうになる。

春4

  前に語ったように、こちらは自然林が多い上に、ほとんどが、
ぶたボケ  落葉樹である。冬には葉を落として、枝が裸になる。
  その裸の枝に、春になると、若芽が一斉に芽吹くのである。
 黄緑色のそれは、山全体をボヤ-ッとかすんだように染めて、
 まるでパステルカラーの童話絵のようだ。
  それだけでも美しいのに、山桜のピンクがポツポツと加わる。
 夢みたいな風景である。
  しかも、カヤぶき屋根の民家が点々とあり、斜面になった
 畑と見事に調和している。
 杉林と常緑樹だらけの九州には、こういう春の風景はない。
春6  やはり、違う土地に来たのだという気分になる。

   東北地方のわらべ唄として、有名なのに、
 「春になれば、氷(しがこ)も融けて、どじょっこだの、
 ふなっこだの、春が来たなと思うべな」というのがある。
  東北弁では、愛着のしるしとして、やたらと「子」をつける
 のであるが、それよりも、九州人として、そういう唄の中に
 うらやましさを感じるのが、氷が融けた水、つまり、
「雪解け水」という言葉である。いかにも清らかそう。
 こちらに来て、小川の流れを見ながら、
 そうか、これが雪解け水か、と感激する。

 「ウサギ追いし、かの山、小ブナ釣りし、かの川」
 という日本を代表する童謡「ふるさと」の景色は、
 町中育ちのボクには、ほとんど童話の世界だったが、
 ここ、山形に来ると、そういう、まっとうな日本の自然
 が、実際にあるような気がして、えらい感動する。

あかてかに   ぼくのふるさとは、長崎なので、もっぱら海である。
 特に、じいちゃん、ばあちゃんのいたのは、長崎県諌早市
 で、そこは、有明海の潟につながる河口の川であり、
 アカテガニが、排水溝から伝って、台所や縁側まで
 勝手気ままに入り込んできていた環境だった。
 海までは遠いのに、干満の差で、潮の匂いも運ばれてきた。
 山形の田舎の、山の自然とは、えらい違いである。

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