石の2 長崎じげ辞典


 長崎には、「ザ・ながさき」というタウン誌があるが、
えびすさん  そこから発行されて、とても人気のある
 「長崎じげ辞典」という500円の小冊子がある。
 長崎と、長崎弁についての、辞典であるが、
 その編集の仕方や、エピソードがあまりにも
 おもしろいので、「新」も出た。

  表紙のイラストは、長崎出身のマンガ家、
 えびす・よしかずさんが担当しているが、その
 えびすさんが、東京に出て最初に、通じなくて
 困った長崎弁が「髪をさばく」だったという。
 「さばく」。長崎では「髪をとかす」の意味である。
  さらに、これはやはりボクも治らないが、
 「ものを片付ける」ことを長崎では「なおす」と
 いう。「この服、なおしといて」と使う。
 これを優子に初めて使った時、優子は服を裏表ながめながら、
 「どっか、ほころんでるの?」と不思議そうにしていた。

  地元の地名や、エピソードもくまなく拾っている。
あさおか  「スカイランド」という言葉には、こういう説明がある。
 長崎の郊外にあった遊園地で、タレントショーなどの
 イベントで人気があった。ある時、まだアイドルだった頃の
 「麻丘めぐみ」がコンサートのため、ここを訪れた時、
 熱狂した長崎のファン達が、彼女の髪を引っぱってしまい、
 それに怒っためぐみちゃんが、「だから田舎もんは嫌いよ」と
 のたまい、ファンの反感を買って、皆でコンサートをボイコット
 するという騒ぎになったなどという懐かしい話も載っている。

  海に沈む夕焼けと、ピーナッツせんべいで有名な
 長崎北部・佐世保の名勝地「九十九島」については、
 その名前の由来になった、大小さまざまな島々の数について
 「本当は百あったが、数えた人が自分が立っていた島を
 数え忘れたため、九十九とされた」という新説を展開している。

  そういう話が散りばめられているのであるが、
 長崎が騒然となった、長崎弁ゆえの有名な話も
 もちろん載っていた。それは「ボボ騒動」である。
 「ボボ」というのは、実は長崎では伝統的に、
 女性のアソコを指す隠語であり、口に出すのはである。
 とはいえ、密かに皆が知っている。
  ところが、ボクが小学生の頃、プロレスが大人気になり、
 力道山が英雄だった頃、悪役の外人レスラーの中に、
させぼ  突然、「ボボ・ブラジル」というのが出現した。

 東京のアナウンサーがテレビ画面で大声で、
 「ボボ・ブラジル-!!」と叫ぶたび、長崎市は騒然とした。
 男達は、母や妻や娘がいる前でどう対応していいか
 わからず、オロオロした。懐かしい話である。
  その後も、NHK長崎の小田切千という女性アナが
 1994年に高校野球の甲子園大会で、佐世保実業の
 勝利監督にインタビューした時に、とちってしまい、
 「それでは勝ちました、さ、さ、させ、させ、させぼぼ、
 させぼぼぼぼ、実業の○○監督です」とやって、
 すっかり有名になったという話も紹介している。
  「長崎じげ辞典」は、長崎県では、必ず家庭に一冊は
  置くべき本となっている。

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