石の2 仙台/ジャズ・フェスティバル




 仙台の祭りといえば、仙台七夕が有名だが、
 ぼくが、むしろ一番楽しみにしている祭りは、
 「定禅寺ストリート・ジャズ・フェスティバル」。
 9月に行われる、屋外の音楽祭である。
 仙台中心部の、定禅寺通りのケヤキ並木を中心に、
ギター3  380ものグループがそこら辺の道端で、30分交代で、
 思い思いに演奏をする。
  名前はジャズフェスとなっているが、あらゆるジャンルの
 音楽がある。ロック・バンドが一番多いが、ラテンあり、
 フォークあり、ゴスペルからハワイアン、沖縄音楽まで。
 ほとんどがアマチュアなので、ものすごくうまいのから、
 そこそこのバンドまで、玉石混交。

  それらが、道のあちこち、広場のあちこちで、
 場所によっては、バンドとバンドの距離が数メートルで、
 演奏を繰り広げる。
 演奏を聞く客は、好みで、あちこち移動しながら、
 立ったまま、あるいは、じべたに座って聞くのである。
 露店も出ているので、生ビールを飲みながら、
 目の前の生演奏のリズムに酔える。

  意欲的な若いバンドは、オリジナルをやっているが、
 ぼくらはむしろ、1960、70年代のオールディーズに、
 心と身体がフラフラと引きつけられる。
  ビートルズのコピーバンドは必ず複数いるが、ものすごく
 うまいのから、目もあてられないのまでいる。
 それでも、みんな、拍手を送って楽しんでいる。
  ふと後ろを見ると、白髪の夫婦がリズムに合わせて、
 うれしそうに身体を揺らせていた。
 ビートルズ世代は、みんな中年以上になってしまったが、
 今では髪の薄い男達も、若い頃は長髪で、カラージーンズで、
 ロック音楽に浸って、それで育ってきたのだ。

 中年バンドといえば、趣向を凝らしたバンドがいた。
 笑いが爆発しているので、そこに移動してみると、
フォーク歌手  三波春夫ばりの衣装を着込んだボーカルのおじさんが
 「秘密のアッコちゃん」をロックで歌っている、と思ったら、
 いきなり、エリック・クランプトンの「いとしのレイラ」を
 やったり、CCRの泥臭いロックを吠えていた。しびれた。
 うまいバンドは、ものすごくうまい。

 パンフレットを見ながら、ベンチャーズのコピーバンドを
 楽しんだ後は、「さあ、沖縄音楽に行こうか」と移動する。
 10分ほど歩く間に、フォークギター一本で歌っている若者
 がいたり、ジャズトリオがいたり、ドレスを着て歌い上げて
 いる歌姫がいたり、アカペラのディオがいたり、それぞれに
 群集が取り巻いている。
 最初は興味がなくとも、「ほお!」と立ち止まったりして、
 新しい刺激を受けるのは楽しい。
 やはり、生演奏というのはいい。しかも、無料。
 青空の下、秋の一日を、ゆっくりといい気分で楽しめる。
 とても良い祭りである。
  ちょうど、芋煮会の始まるシーズンでもある。
 (1998年)

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