2の石 蔵王の樹氷では凍えた


横倉の壁    仙台の山といえば、蔵王と聞いていた。
  スキー場が有名だ。
  ただ、「蔵王山」という山はない。東北に南北に
  伸びる「奥羽山脈」の峰の続きの、仙台あたりの
  9キロくらいを総称して「蔵王」というのである。
  へえ。
  そして、宮城蔵王、山形蔵王があり、
  有名な「蔵王スキー場」というのは、
  山形県側の、蔵王温泉町にある。

ろーぷえい286   「蔵王の樹氷見学バスツアー」というのがあるというので、
  さっそく二人で参加した。
  バスは仙台からトンネルを抜けて山形県に入り、
  そこから登る。蔵王温泉町に着くと、道端の雪が
  1メートル以上ある。すごい。
  雪だらけで、スキーヤーの格好をしたみなさんが、
  たくさん歩いていた。ツアーはそこからロープーウェイで
  山のずーっと上まで昇る。下には、スキー場と白い山肌が
  広がる。スキーヤーがすいすい滑っている。
  もう、ぼくは窓にへばりつきながら感動のあまり
  「うおーうおー」と唸っていた。
  ロープーウェイは、途中で一回乗り換えて、さらに
  上へと昇る。その終点が「地蔵山頂駅」。
  標高が1600m もんすたー ある。こんな高い山は初めて。
   白い雪原に、ボコボコと雪の固まりが立って
  いるのが、樹氷だ。
  これはトドマツに雪がからみついて、
  白い怪物が立っているように見えるために、
  「モンスター」と呼ばれている。
   実に美しい光景である。銀世界。

 しかし、そこまで来て、ぼくは大変な間違いを
  犯しているのに気付いた。
  なにしろ、こちらは北国である。しかも、冬、
凍える   しかも、雪山の頂上である。もう、寒いのなんの。
   実は、福岡で、冬の町を歩く格好で来てしまったのだ。
  下着はTシャツ一枚だし、足も木綿のソックスに軽い
  スニーカー。足は痛いし、身体は凍える。
  他のツアー客が、百m先の山頂をめざして
  雪原を歩いてゆくのを見送って、ぼくら二人はさっさと
  食堂に入って、熱燗を飲んで、ただただ時間まで
  外を眺めて過ごしたのだった。

  (この時の地蔵山頂駅の休憩所はまだ田舎臭い古い建物で、
   今と違って、おでんやら日本酒の熱燗を売っていた。)

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