石の2 河口湖と忍野八海を目指してドライブ

kawatuti1 コロナ禍で、他県への旅行は遠慮して下さいという雰囲気のあった
2020年の夏だったが、9月頃になると、そろそろ経済を活性化しな
ければ国がやっていけないということになり、国が主導する形で
GOTOトラベル・キャンペーンが始まった。税金を大胆に使って
行う国の大事業である。35%割り引きするから、国民の
みなさん、どんどん旅行に行って下さいというのである。
宿泊料が1万円だとすると、3500円は国が払うから7500円で
泊まれることになる。その上に地方自治体のキャンペーンでも似た
ようなことをやっていて、来てくれれば5000円引きしたりするので、
差し引き、1万円が2500円で泊まれることになったりするのだ。

ということで、我々夫婦もこれに乗ったのである。妻が透明で
きれいな水を見たいというので、よしそれならばと、山梨県の
忍野八海(おしのはっかい)と、長野県の大王わさび園に
行った。今まできれいな水で印象深かったのは、阿蘇の白川水源が
一番だったが、今度は富士山の雪溶けの水が地下水となって
地中を30年以上も潜った後に、山麓に湧水となって湧いて出る
清水の名所である。

ぼくらはもうとっくに仕事を引退した65歳以上なので、天気を選んで
出かけられるのがうれしい。特に今回はツアー旅行ではなく、自分達で
車を運転して行くことにしたので、天気予報を見ながら旅行先をいくら
でも変更することが出来る。要するに、天気が良い地方に車を走らせ
ればいいのである。これこそが、引退後の贅沢である。
仙台を出る時、最初に運転した妻は高速を運転するのが久しぶりだっ
たので緊張していたが、福島を過ぎる頃には楽しくなってきたようで、
とうとう山梨県の河口湖までひとりで運転してしまった。

東京の首都高速を走るのは怖いなあと思っていたが、山梨方面ならば、
埼玉から八王子に向かえばいいので、やや安全かなと思っていた。
その八王子から中央高速に入って相模湖を横に見ながら、休憩したのが、
談合坂SAである。なんか、よく聞く名前である。大きくてオシャレな店が
かわぐち2 並んでいる。ソバを食べると、醤油味が濃い東京味である。懐かしい。
首都圏を走るというので緊張していたが、もうここまで来ると慣れてきて、
山形県の田舎の道路と同じよね、と妻が言った。

やがて富士北麓にある、山梨県・忍野村に着く。忍野八海はそこにある。
八つの湧水池と小川を巡りながら散歩するのだが、コロナ禍以前は、
中国人観光客であふれかえっていたという。今はそれがない分少ない
というが、それでも平日なのに、日本人だけでも充分に人が多い。
やはり、きれいで透明な水の流れを見たいという人は多いのだ。
それだけで心が美しくなる感じがする。地球ではこの先、人口が爆発的
に増え、水が絶対的に不足するようになるという。今でも飲料水に困って
いる国々は多い。しかし日本は雨量が多く、しかも多くの雨は森林や
地中に貯えられて湧き水として出て来る。こんなきれいな清流が豊富に
湧く国は世界中を見ても珍しいのだ。

忍野八海の次に、長野県の「大王わさび園」に行く。黒沢明監督が映画
「夢」の中で、清流の流れる中に水車のある風景としてロケを行った場所
である。ワサビは清流でしか育たない。要するにコンコンと湧水が豊富な
所でしか育たない。ワサビは日本固有の植物であるが、外国ではまず
ワサビの栽培は難しいだろう。なにしろ清流が豊富な国が少ない上に、
その湧水をを独占して野菜を育てるなどという贅沢が考えられない
からだ。水に関しては日本はとても幸福である。
(2020年9月)

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