石の2 身近な古代生物…カブトガニやスギナ


古代1 ぼくが子供の頃の長崎では、カブトガニを壁飾りにしている家が
けっこうあった。シーラカンスと同じような古代生物でありながら、
その頃はまだ、北部九州から瀬戸内海に細々と棲息していた。
兜の裏を返すと、ほとんど三葉虫みたいだし、食用にもならないし、
ヨソ者へのこけおどしとしで、壁に飾るしかなかったようなものだ。
東京では、その名前すら知る人もいないし、マスコミで取り上げら
れることもないし、もうすっかり、絶滅したもんだと思っていた。
ところが、数年前、長崎に帰った時、砂浜を散歩していたら、その
死骸が波際に打ち上げられているのを見て、まだいるんだ!と
驚いた。親戚に聞くと、時々いるよとのこと。

そこで、一応、ネットで検索してみると、最近、カブトガニの血液が
細菌検査に、とても有用であることがわかり、北米の東海岸に多く
いるカブトガニが大量に捕獲されて薬品工場に運ばれて、一定量の
血を抜かれて海に戻されているという。なんでも、細菌内毒素に反応
してすぐに擬個し、その反応が速いので、「人類を救う」とまで評価され
ているらしい。ただ、その抜かれている血液の映像を見て、ギョッとした。
なんと、カブトガニの血は「青い」のである!。

ぼくは今まで、青い血といえば宇宙人しか知らなかった。(いや、もちろん
本当に知っているわけではなく、そういうイメージだったのだ)
古代2 これは、体内に酸素を運ぶヘモグロビンが鉄分なので、ぼくらは血が
赤いと思っているのだが、カブトガニはその代りに、銅成分のものを
使っているので青いのだという。
しかも同じ理屈で、血が青い生物は他にもけっこういるのだという。
例えば、イカやタコなどの軟体動物、エビやカニなどの節足動物なども
そうだという。ダンゴムシや、なんと、アサリまでもそうだという。
知らなかった。青い血は、宇宙人だけではなかったのである。

そして、古代生物ということで、植物界を見渡せば、イチョウが有名である。
日本ではイチョウなどは、そこら辺の並木として普通の樹木であるが、
欧米の植物学者などが、日本に来ると、とても感激するそうである。
そして、これは日本だけではないが、湿地に生えるトクサも古代種である。
地球上の植物は、水中の藻から始まって、シダ類→裸子植物→被子植物
と発展するのだが、古生代のシダ類もトクサも当然ながら、今よりもずっと
巨大な大木だった。そして、シダ類トクサ科の仲間で、現代人に今でも最も
身近なものが、スギナである。雑草としてツクシと対で、そこら中にやたら
めったら生えてきて駆除に苦労する植物である。これが古生代植物なので
ある。今でこそ、10㎝くらいのものだが、これが古生代では十数メートルの
巨木であり、恐竜が跋扈する前から地上にそびえ立っていたのである。それ
が今では、被子植物の発展に負けて、人間に踏みつけられるような雑草に
落ちぶれてしまったのである。さぞ、残念であろう。

しかし、古代にはブイブイいわせていたのに、やはり小さくなってしまったと
言われているものに恐竜がある。恐竜時代には、あれほどデカい図体を
古代3 誇っていたのに、何かの原因で一斉に絶滅してしまい、その生き残りが
現在の鳥類に姿を変えてしまったと言われている。カラスなどを見ていると、
確かにそうかもしれないと思う。知能は高かったらしいのだ。

そして、恐竜といえば、今年になって、長崎の野母崎半島の古い地層から
巨大肉食恐竜であるティラノサウルスの歯の化石が見つかったという
ニュースが伝わってきた。ぼくがカブトガニの死骸を見つけた辺りである。
8100万年前というと、日本列島の西半分がまだ大陸と繋がっていた頃で
ある。多分、映画の「ジェラシック・パーク」で見るような恐竜達がワンサカと
長崎の辺りを闊歩していたのだろうと思われる。そして、長崎半島辺りに
その時代の化石が意外に多く発掘されるのは、今でも島だらけの地形から
わかるように、起伏の多い土地であり、死骸がその谷底に集まり、それが
地殻の上下によって、最終的には隆起して偶然残ったのではないかと
言われている。
それにしても、庭の雑草のスギナをもう一度見て、想像して欲しい。
あれは、古生代には、10数メートルの巨木だったのである。

(2015年7月)


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