石の2 混浴露天風呂


混浴1 仙台市中心部から約1時間ほどの郊外に、
作並温泉という、古くからの温泉街がある。
温泉街といっても、みやげ物屋が立ち並ぶとい
うスタイルではなく、大きな旅館が、ドデンドデンと
建ち並び、その中で、何もかも済むようになっている。

その大型旅館の中で、最も老舗というと、
岩松旅館」であり、露天の岩風呂が
実に風情があるというので、人気がある。
日帰り入浴も出来るというので、行ってみた。
なるほど、室内の大きな内湯もあるが、
渓流沿いの荒削りの湯船がなんとも自然である。
すぐそばの清流には、ヤマメだろうか
魚の影も見える。

極楽極楽と思いながら、ふっと見渡すと、
なぬ!女性がいる。家族連れなのだが、
若いママが子供を抱いて、湯船に浸かっている。
実は、岩松旅館の露天風呂は、宮城でも珍しい
混浴なのである。
しかも、ばあちゃんばかりがいるという山奥の田舎の
混浴とは違って、観光客中心である。
ギャルがたくさんいるとは言えないが、心根の据わった
若いママなどは、実に普通に振舞っている。
久しぶりに、妻以外の乳を見たのであった。

混浴2 そういうのが気に入ったのではなく、この露天風呂の
景観が気に入って、その後も数回行ったのだが、
時には、若い娘達が、湯船に浸かっている僕の
目の前を横切って、その先の湯船に入っていた。
日本の温泉は、タオルを巻いて湯に浸かるのは
いけないので、彼女らは湯船の直前まではバスタオルを
巻いていて、湯船に入る前に、バスタオルを外す。
見ちゃいけないと目をそらしつつも、男だもん、
ちょっと風景に目を移すふりをして、横目で眺めてしまう。

そのうちに、こりゃマズいかなと思ったことがある。
ぼくはメガネをかけていたのだ。だって、せっかく
景観の良い露天風呂に入るんだから、湯船に入りながら
良い眺めを楽しみたいと思っている。良い眺めといっても、
決して不純な方ではなくて、あくまで山紫水明の方である。
しかし、混浴という状況では、変な目で見られかねない。
女性の視線が、射すように感じられる。
それ以来、ぼくは混浴に入る場合、いや、温泉に入る
場合は、メガネをかけなくなった。よくよく考えれば、
風呂にメガネ自体が変だったのかもしれない。
(2008年)

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