2の石 東北の紅葉はすごい


紅葉  10月に入ると、山から紅葉が始まる。
 宮城県で一番の名所が、鳴子(なるご)峡。
 鳴子という温泉町の近くにあり、実はそこは
 優子が、小学生時代の数年を過ごした町でもある。
 ということで、真っ最初に行ってみた。

  国道から、険しい渓谷に降りて、沢沿いに断崖の
 紅葉を見上げながら歩く。1キロほどの遊歩道に、
 観光客が、アリのようにひしめいていた。
  立派なカメラと三脚を持った、アマチュアカメラマンが
 わんさかいる。その目が燃えていた。
  それにしても、やはり、東北の紅葉はすごいと思う。
 寒さが紅葉を促すし、落葉する樹木ばかりだからだ。
 九州では、こうはいかない。

 福岡にいる頃、数回、紅葉狩りのバスツアーに参加
 したことがある。一回は、北部九州の英彦山(ひこさん)、
 もう一回は、はるばる宮崎県の椎葉まで走った。
  しかし、紅葉は点々としかなく、その間の国道でも
 色づいているのは、柿の木の葉っぱくらいだった。
  大分の耶馬溪にも行ったが、これもこちらの紅葉と
 比べると、紅葉のほころび、くらいでしかない。
 ビックリするのは、こちらのバスツアーパンフを眺めていると、
 東北のあちこちの、紅葉の名所の宣伝文句に、
 「九州の耶馬溪と肩を並べる程の景観」
紅葉3   というコピーがあることだ。えっ!?と恥じ入ってしまう。
 あのー、それほどたいしたもんでは、ないんですけど
 と電話をかけたくなる。
 どうも、名前が全国を一人歩きしているようである。

 それにしても、東北の紅葉がすごいなと思うのは、
 紅葉が、鳴子などの一ケ所に限定されないことだ。
 山全体が紅葉する。
 九州のように、どこぞの神社や寺などの一本のモミジ
 がきれいです、ではないのだ。
  点ではなくて、面で紅葉する。
 しかも、紅葉した丸い山が、幾重にも連なっている。
 それを山岳道路の上から眺めた日にゃあ、ああた、
 感激のあまり、夢と現実の区別がわからなくなる。
 翌日から幽体離脱を始めたという人もいる。
  大分の耶馬溪から観光に来た、みやげもの屋の主人は
 九州に帰ってから、東北の紅葉を見たショックで、
 床に伏せって、それ以来、泣き暮らしているという。

 ただ、紅葉といっても、赤ばかりではない。
からまつ  黄色に色づく木が、これまたきれいなのだ。
  特にきれいなのは、カラマツ、カツラ。
  これが九州にはない。寒い国の樹木である。
 特に、松の種類であるカラマツというのは、
 春には黄緑の若芽がかわいいし、紅葉すると
 見事な黄色になる。それが群生したカラマツの林ほど
 美しいものはない。松の中で、唯一、落葉する。
 そのカラマツの林が九州で、唯一といってほど、
 見れる場所が、大分の湯布院にある。
 湯布院から、大分へ向かう国道の峠にある、
 由布岳の登山口のバス亭付近である。
 湯布院に行った時には、ぜったい見に行くべし。
 ちなみに、東北の人はわざわざ行く必要はないです。

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