熊本地震のこと
２０１６年４月１８日（木）午後９時２６分に熊本地震が起こった。
テレビで「秘密のケンミンショー」を観ていた時だった。テロップで
「熊本で地震。震度７」と出て、震度７？ウソだろ！と思った。だって、
東日本大震災での仙台の我が家での、家がつぶれるかと思った揺れ
ですら、震度６強だったからだ。すぐにNHKにチャンネルを変えたら、
大体的に報道していて、ただ震度７は益城町だけであり、熊本市内は
６か５だった。それでもすごい揺れである。だいたい、九州というのは、
台風銀座と言われていて、台風の被害はしょっちゅうだが、地震には
縁のない土地のはずである。だから、地震への備えなどは全くない。
当然ながら、すごいことになっているはずである。テレビを先程の
「ケンミンショー」に戻したら、もう中断されていて、特別ニュース番組に
変更されていた。それほどの事態だったのだ。
この地震では長崎も震度４だというので、すぐに長崎の母に電話を
してみたら、「あー揺れてるよ」くらいのものだったという。次に熊本北区の
植木町の親友に電話をかけてみると、あれは熊本の南部はひどいが、
こちらは目立った被害はないという。ただ揺れが怖くて、その晩は夫婦で
車中泊をしたという。次に熊本市中央区に住み、熊本市電の運転士を
している甥っ子に電話しようと思ったが、こちらは大変だろうからと思い、
２週間後に休暇で長崎の実家に帰って来た時に、電話をして話を聞いた。
彼によると、前震の時はまだ仕事中で、車庫と営業所のある駅まで戻る
運行をするために、別の始発駅で待機していたのだという。お客さんは
一人で、彼は運転席にいた。そこに突然、突き上げるような縦揺れが
来たという。ガタガタ揺れて恐ろしかった。本部からの指令で、その場所で
２時間待機することになった。お客さんにはしばらく動かないと断って
いたが、外を眺めると、毛布を体に巻いて寒そうにしている人がウロウロ
している。そこで彼はそういう人々に「車内は暖房が利いているので、
入って休憩していいですよ」と呼び込んで休ませたという。そして、真夜中
の１２時頃、やっと戻るよう指示が来たので、徐行しながら走らせて本部に
帰ったという。
営業所から彼のマンションまでは自転車で１５分くらいなので、帰って
みると、戸棚がみんな開いて何もかもぶちまけられていて、大型冷蔵庫
は２ｍ動いていたという。ある程度片づけをして、戸棚にはガムテープを
して、その間も揺れが続いていたので、炊飯器とお米を持って営業所に
戻り、そこで２時間程仮眠したという。そして朝になると、前の晩から
いた宿直の人と二人で、これが絶対必要になると予想して、ある限りの
お米を焚いてオニギリを作り続けたという。そして市電は二日後には
再開した。彼の周りでは、停電は２時間くらいだったという。
そして、彼が言うには、テレビのニュースでは何も言わないけれど、市内
で有名なショッピングモールである「ゆめタウンはません」は、天井が崩れて
半壊しており、アーケード街の「サンリブ健軍」というスーパーにいたっては
全壊していて、もし、地震が昼間に起こっていれば、相当の死傷者が出て
いたはずだという。テレビ局では、そういう会社がCMのスポンサーなので、
あまり詳しくは報道しないらしい。ましてや、全国区のテレビ局は、被災の
現場というのは、益城町などの非常に限られた場所を映すだけだ。
阿蘇大橋が崩落したというのはショックだったが、ぼくがもう一つ気になって
いたのが、立野から高森までの「南阿蘇鉄道」というローカル路線である。
ものすごい渓谷に鉄橋がかかっていて、そこをゆっくり走るというのが名物
だった。その鉄橋は崩落こそしていないが危険だという。さらにその先では
土砂崩れでレールもゆがんでいるという。もともと赤字路線だったので、廃線
になるかもしれないという。ぼくの好きなローカル鉄道であり、残念である。
さらに彼が言うには、全国ニュースではほとんど流れないが、熊本空港から
南阿蘇に行くために便利なバイパスとして前年に開通した「俵山トンネル」が
内部で崩壊しているというのである。どのくらいの崩壊か、余震が続いている
ために、ほとんど調査ができないという。その途中にある幾つもの橋ですら、
そのジョイント部分がズレていて段差や隙間があり、車も進めないのである。
この便利なバイパスを修復するのには何年かかるのだろうか？ と思ってい
たら、九州新幹線も、九州横断道路の修復も、２週間くらいでやってしまった。
さすが日本である。ただ、と甥っ子は言う。熊本市電は毎日、外国人観光客が
一杯で、増便を出すくらいだったのが、地震によって全くいなくなってしまった
という。それが戻るのはいつになるだろうか。甥っ子は長崎の実家で、
２泊３日休んで、また熊本に戻っていった。
（２０１６年５月１日）
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