石の2 クラゲの水族館


くらげ1 クラゲって見ていると、飽きないと思ったのは、
福島県・いわき市に、最近出来たばかりの水族館、
アクアマリンの水槽で見てからだ。
水の中で、フワフワとしているだけだが、
微妙に動いていて、あれで、生きているのである。
幻想的だな、と、ものすごく魅了された。

もう一度、ゆっくり見てみたいなあ、と思っていたら、
山形県の鶴岡市に、クラゲでは日本一の水族館が
あるという。「加茂水族館」である。
遠かったがドライブがてら行ってみた。
日本海の波が打ち寄せるところの、狭い海岸の
道路端にあった。少し気が抜けるような、
ひどく古びたコンクリートの、小さな水族館である。

クラゲ水槽は、地下1階にあり、それなりに充実していたが、
見物客でぎゅうぎゅうで、通路も狭くて古くて、
1階では、イルカのショーもやっているのだが、
福岡や福島などで、大きくてきれいな水族館を見てきた
目からみると、どうにも地味である。
本当はクラゲだけで、こじんまりとやっていこう
と思っていたに違いない。

クラゲ それがここにきて、突然、全国的に、
クラゲがブームになっったのである。
癒される♪という。
湘南の江ノ島水族館でも、流行に乗って、
クラゲの水槽をファッショナブルに拡大して、
女性を中心に、客が増えたそうである。
加茂水族館にも、その余波が押し寄せてきた。
なにしろ、日本一のクラゲ水族館と銘打っている。
バスツアーまでが、来るようになった。
その結果が、ぎゅうぎゅうの人混みとなった。

しかし、元々が田舎の小さな水族館である。
ファッショナブルにするにも、予算がない。
うれしいけれども、困っているという感じだった。
子供達は、イルカのショーが好きなようだが、
男女のカップルや、大人はあきらかに、
クラゲの魅力に引かれているようである。

クラゲにエサを与えるショーというのもあった。
クラゲ3 え!何?クラゲって、何を食べるの?と
息を詰めて、見守った。
すると、上の方から、ヒラヒラと透明な破片が
降りてくる。実は、別のクラゲの身だという。
クラゲはクラゲを食べるのである。
人間が、牛や豚を食うことを考えれば、
何の不思議もないことではあるが…。

しかし、クラゲには歯もないし、ワッシワッシと
食うのではない。ユラユラとなんとなく近づいて、
なんとなく、エサにまとまりついて、
よくわからないまま、いつの間にか、
食べてしまっているらしい。

どっちみち、水分が99%の生物である。
食べるといっても、多少の栄養分が移動する
だけに過ぎないのだろうが、あれはあれで、
何万年にも渡って、あの形態のまま生きているのである。
何を考えてるんだろうなあ?と思う。
多分、何も考えてないのだと思う。
何も考えないまま、ずっと生きているのである。
それだけでも凄いなあ!と思う。
(2006年5月)
…その後、加茂水族館は大人気になり、新装して、
 とてもきれいになった。


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