2の石 桜の園、桃の園


桜1  東北の三大桜といえば、宮城の「大河原」、青森の「弘前城」、
 福島の「三春の滝桜」となっている。
 ぼくらは、5年の間に三つとも、一応行った。見た。
  大河原は地元なので、ブルーシートを持って、
 アウトドアの仲間などと、電車でも車でも、気軽に
 出かけられるので、何回も出かけた。
 ただ、あとの二つは遠方なので、バスツアーで行った。

 バスツアーはなんといっても、楽である。酒を飲みながら
 景色を眺めてればいい。地理の不安もない。その上に、
 マイカーで行くよりも安い。遠方になるほど安い。
  だから、青森の弘前(ひろさき)も、角館(かくのだて)も
 バスツアーで行った。
 ところが、バスツアーの場合、事前予約制なので、開花
 がずれると悲惨なことになる。

花豚  ぼくらの場合、弘前は、半分以上散った後だった。
 しかし、バスガイドはほがらかな声で
 「この全部が満開の場合、それはそれは見事です」
 と言いながら、雨の下、傘をさして案内した。

  翌年に行った、角館の時には、開花前だった。
 それでもツアーバスで駐車場はいっぱいだった。
 みんなで、つぼみの桜の下、城下町を歩きながら、
 「早過ぎたなあ」とつぶやきつつ、それでも、たまーにある
 満開の桜の木の下で、さかんにシャッターを押していた。
 そのあと、駐車場に戻ると、
 「東北の桜の名所を巡る1泊2泊の旅」という
 ツアーバスが目についた。つまり、今日から明日にかけて、
 東北の開花前の桜の名所を、二日がかりで見て回る
 わけである。ほとんど、馬鹿にみえた。

 それにしても、福島県の「三春の滝桜」を見に行った時に、
 初めて見たのだが、その途中にある、桃の果樹園が、
 実に美しい。その満開の花は、桃色というくらいで、
 まことに華やかな色である。これは、桜よりもきれい
 なのではなかろうか?
  あまりに印象的だったので、翌年は、宮城の桜が満開
桃園  だったにもかかわらず、同じ時期に満開になる、福島の
 桃を見に行った。九州には、桃の産地がないこともある。
 桃といえば、岡山、山梨が有名だが、福島も産地なのだ。

  宮城県から国見峠を越えて、南の福島盆地に下ると、
 桃園がワッと広がる。平地を走っても、えんえんと桃園が
 続く。この色彩はなんだ!と思う。
 青空に映える桃色の園。
  桜というのは、桜色というが、それはけっこう白っぽい色
 であり、桃の園に比べると、ずっと、灰色に近い色である。
  ぼくらはドライブしながら、どうして、桃の園で花見をする
 人々がいないのだろう?と不思議だった。不思議なまま
 桃源郷の中を行きつ戻りつした。
 来年も、また、この桃の園を見に来ようと思った。

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