石の2 長崎に18㎝の雪が積もった


長崎に1 1月24日(日)に、長崎に13㎝の雪が降り積もった。さっそく長崎の
母と妹から電話がかかってきた。大喜びである。その声が弾んでいる。
「すごいよ!きれいよ!」なにしろ、長崎では雪が降っても、すぐに溶けて
白く積もることはほとんどない。雪というのは本当に憧れなのだ。そのため、
長崎の母と妹は、初めて仙台に来る時期を、わざわざ1月にしたのだし、
仙台から山の方に車で走った時には、白銀の世界に感動するあまり、
途中で「ここでいいから歩かせて」と、まっさらな雪原を、母と妹はキャー
キャー言いながら歩き回ったのである。そのワ―キャーの世界が突然
長崎に現れたのである。興奮しない方がおかしい。

しかし、もう母も88歳であり、妹も足が悪くなり、そう簡単に雪道を
出歩くことが出来ない。窓の外を眺めてワ―キャーとはしゃぎ、妹は
今日は運転も出来ないし、どこにも出かけられないからと、パジャマ姿で、
昼から雪見酒を始めたという。さすがに我が妹である。

そういうなか、同居している妹の長男(独身37才)が、雪道を歩きたいと
朝から出かけていった。母と妹家族が暮らす長崎の家は、矢上という
長崎の郊外にあり、市内からはバスで30分くらいはかかる場所だ。
バスが動いてないながら、甥は長崎市内まで行こうと、長崎本線の一番
近い駅まで歩いたのだが、そこまでは田舎道を1時間くらい歩く。風も強く
長崎に2 雪も降っている中を、彼は「そうか、これが雪道か、これが吹雪というものか」
と味わいながら喜んで歩いていた。日曜日なので、誰もいない。ところが、
その田舎道を走ってきた車が、彼の脇で止まってくれて「乗んなさい」と
言ってくれたという。どうも、彼を日曜日なのに仕事に出なければいけない
人と思ったらしい。それで、駅まで運んでくれたのだ。

その駅は長崎市内までは一歩手前の「現川駅」という無人駅で、そこには、
実際に仕事に行くために来た数人の乗客がいたが、聞くと、雪のために
運行中止になったという。本当に困っていたのである。すると、それを見か
ねたタクシーの運転手が、「よおし、オレがみんなまとめて面倒みちゃる!」
と宣言し、全員を希望の場所までタダで送り届けてくれたというのである。
甥は仕事でもないのに、近所まで送ってもらい悪かったと言っていた。
当たり前だと妹も呆れたようだ。

その日は、平地を走る市電はなんとか走れたが、路線バスのほとんど
が止まったそうだ。なにしろ急坂ばかりの長崎なので仕方がない。
初めて長崎に来て、坂道をギリギリで蛇行する市内バスに乗った人が
「ジェットコースターみたいで、ドキドキした」と言っていたが、そういう道
を、雪が降った状態で走ることを想像して欲しい。恐怖である。ましてや、
長崎のバス運転手は雪道走行の経験がほとんどないのである。それを
走れというのは、死ね!というのと同じである。
長崎に3 ということで、さすがに路線バスのほとんどは運休になったが、運送の
車は走らざるを得ず、雪道に馴れないマイカーなどを含めて、その日、
市内では130件のスリップ事故が起きたという。

仙台などでは、雪が降るとすぐに市道レベルまで、すぐに特殊車両である
除雪車というのが動き出して、意外にすばやく除雪をやってくれるのだが、
長崎にはそういうもんはない。道が白くなっても、黙って見ているだけである。
先が平たい雪かきシャベルというのを置いている家庭もほとんどない。
そして、2日目にはついに積雪は18㎝にまでなった。長崎史上最高である。
長崎人は初日の日曜日には大喜びしていたが、翌日の月曜になると、出勤
しなければならないのに、バスも市電も止まり、歩いて行くしかなく、さすがに
困ってしまった。ただ、学校は前日から休校を決めていて、休日にした店
も多かったようだ。まとめると、困りながらも、大喜びしていたようである。
(2016年1月)

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