石の2 ちょっと不思議なお菓子・仙台と長崎


霜柱3 仙台みやげで有名なお菓子というと、「萩の月」が代表で、
ぼくらもよく長崎に買って行ったり、贈ったりするのだが、
最近、仙台の和菓子で、隠れた名品を見つけた。
九重本舗・玉澤(たまざわ)の、「霜ばしら」である。

週刊文春の写真ページ「おいしい!私の取り寄せ便」で、
料理家の枝元なほみが、紹介していたのだが、
実に繊細な感触で、口の中でさっと溶ける飴菓子だという。
「知ってる?」と優子に聞くと、
「知ってる知ってる、わあ懐かしい!」と
さっそく買ってきてくれた。

缶に入っていて、蓋を開けると、白い粉がいっぱい??
ところが、彼女がその粉の中に指先を入れて、少し探り、
「あった」とつまみあげたのが、ほんとに霜柱そっくりの
一口大の白くて薄い飴であった。
霜柱 差し出されて、どれと口に入れてみる。「お!?」と思う。
舌でちょっと圧するだけで、ホロリと溶けるのだ。
そして、上品な甘さの余韻が残る。笑みが浮かぶ。
もう一口、ホロリ。もう一口、ホロリ。
実に、なんとも不思議で軽やかな甘い感触。
ぼくは、その場で、長崎の母に送ることを決めた。

説明文を読んでみると、
元禄年間から仙台で愛されている、「晒(さらし)よし飴」
という、水飴が細い糸状になるまで、何度も何度も、
伸ばしては折り重ねて作る飴菓子で、
熟練した職人の手作業で作られる伝統の一品だと言う。
その繊細さゆえ、気温と湿度に敏感で、
10月から4月までの、寒い時期に限ってしか販売しない。
また、壊れやすいので、缶に粉を入れて
その中に埋もれるように、しつらえている。
1缶40g入りで、1470円だが、
自分で買って食べるというよりは、人から送られて
食べるものだったと、妻がいう。
これならば、確かに贈ってみたい。
一口香 もちろん、長崎の母もおいしいと、すごく喜んでくれた。

一方、長崎で不思議なお菓子というと、
一口香(いっこうこう)」というのがある。
見た目は、楕円形のまんじゅうなのだが、
噛んでみると、外側のやや硬い殻が割れてしまい、
中が空洞になっているので、「あれ?」となる。
つまり、外側だけのお菓子なので、面食らうと思う。
バカにされたと思う人も出るかもしれない。
でも、内側にはゴマのペーストが塗られていて、
そこはかとなく、旨みを感じる。和菓子というよりは、
中国渡来のお菓子であり、高級なもんではないが、
長崎では伝統的に人気がある。ぼくも好きだ。
ただ、おみやげに用いるかどうかは、やや悩む。

長崎みやげといえば、カステラが普通だが、
実は、ぼく自身が大好きなお菓子が別にある。
長崎というより佐世保なのだが、
九十九島せんぺい九十九島せんぺい」というやつである。
これがうまい。時々、むしょうに食べたくなる。
東日本ではほとんど知られていないが、
普通の、もち米を醤油で焼いた煎餅ではなくて、
もう少しバタ臭い、甘いカラメル分をカリカリにして、
中にピーナツを入れた、せんぺいである。
どちらかというと、洋菓子の硬いクッキーである。
これは、知られざる長崎県名物として、推薦したい。
ぼくは、子供の頃から、これが大好きであった。
佐世保では、おみやげとして大人気商品である。
(2008年)

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