石の2 初めての大阪…その2

大阪2-1 大阪に関しては何もわからなかったので、まず観光雑誌を買って
研究しておいた。東京で中心といえば銀座四丁目の交差点にある
服部時計店が思い浮かぶが、大阪でそれに当たるのは、多分、
道頓堀のグリコの看板の場所だろう。大阪といえば、たいていそこ
が出てくる感じがする。その道頓堀があるのは「なんば」である。
バスツアーの一日目、造幣局の夜桜を見た後、阿波座のホテルに
荷物を置いたのが午後8時。すぐに「なんば」に行くことにした。
地下鉄の千日線で3つ目なので近いと思っていたが、乗るホーム
を間違えて中央線に乗り本町に着く。すぐ御堂筋線に乗り換えて
なんばに着いたが、地下鉄・中央線というのは、東京の銀座線と
同じくかなり古い路線であり、設備も古い。

目指すは「戎(えびす)橋」である。14番口を出て歩くということだけ
はYouTubeを見てわかっていたが、いざ外に出るとすぐに迷った。
妻がグーグルマップで誘導させるようにすると、歩いて2分だった。
そこに出ると、目の前に戎橋があり、振り返るとグリコの看板が
あった。すごい感激だった。とうとうここに来たぞと思った。そして、
ものすごい人混みであり、外国人観光客だらけだった。仙台で一年
間に見る外国人観光客の百年分が行き交っていた。そして誰もが
大阪2-2 仲間と一緒にグリコの看板の走るポーズを真似して写真を撮って
いるのだ。もうあらゆる国の言葉が飛び交っていたし、平日なのに
ほとんどお祭り状態であった。

そして目の前には、道頓堀の水面があった。感激した。
都会の真ん中には川が流れているのが普通で、東京では隅田川、
仙台では広瀬川、福岡では那珂川であり、それぞれに川を大事に
しているのだが、実はどこも道路と川縁との落差が大きい。普通、
水面まで5,6mはあると思う。ところが道頓堀というのは、川という
より運河であり、幅も数mであり、水面が目の前である。阪神が
優勝した時には、よくここに若者が飛び込む映像が流されるが、
この川は濁っていて汚く、よくそんな所に飛び込むなと感心する。
それにしても、大阪は水の都と言われながらも、どうしてその多く
の川は汚いのだろうか?東京の川はどんどんきれいになっている
のに、大阪の川は一向に改善されないようである。

それにしても「なんば」である。道頓堀である。大阪である。
どの店の看板も飾りもコテコテであり、装飾過剰であり、すさまじい
大阪アルファ ばかりである。わびさびの対極である。かに道楽のかにの巨大な
看板は有名だが、寿司屋やフグ店の看板も、どれも立体的になって
いて、人の目をどぎつく引きつける。いかにヨソより目立とうかという
意識にあふれている。エゲツないというか、おもしろいというか、
もう思いっきり遊んでしまえという感じである。スマートさとは無縁で
ある。こんなに派手な景色の場所は、日本中探してもここしかない
だろう。ああ大阪に来たという気分になった。

そして、どこの店に入ろうかと迷った挙句、「ぼんくら家」という、お好み
焼き屋に入る。入ってみると、道頓堀の人並みを見下ろすのにとても
良い店だった。お好み焼きもおいしく、そこからは、道頓堀をクルーズ
する船の人々の楽しそうな様子も見えた。店を出る時に妻が、従業員
の女の子に、タコ焼きを買いたいんだけどどこがおススメ?と聞いて
みると即座に「くくる」がとてもおいしいと教えてくれた。そこでぼくらは、
道頓堀で一番有名な「くくる」の店に行ってみたら、既に、外国人観光客
を中心に十数名が並んでいた。ぼくらも並んで買って帰りホテルで
食べてみたが、今まで考えていたたこ焼きよりもずっと柔らかだっ
た。仙台でたこ焼きといえば「築地・銀だこ」くらいしかないが、
大阪2-3 こちらは外側がパリパリしていて大阪のたこ焼きとはちょっと違う
ような気がする。

なんばから阿波座に帰るにも地下鉄を使ったが、こちらの地下鉄は
エスカレーターはみんな右側に並んで、左側を空ける。そちらを
急ぐ人が歩いて登る。仙台も東京も左側に並んで右側を空けるので
逆である。まあ、本当は片側を空けるのはいけないのであり、地下鉄も
両側に立って下さいというキャンペーンをしているのだが、日本人の
「人に合わせなければ…」という性格からして、是正されそうにない。

ホテルに帰った後、シャワーを浴びてお酒を飲みながらテレビを観る。
できれば、大阪ローカル局の番組で、ローカル色の強いものを見た
かったのだが、大阪でもアナウンサーというのはしっかりときれいな
標準語をしゃべるのであった。
(2019年4月)

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