初めての大阪…その4
通天閣のある「新世界」というのは、大阪では「なんば」よりももっと
下町であり、昔はちょっと怖い町だったという。でも今は大丈夫です
とバスガイドさんが言う。大丈夫になったきっかけは、1996年に放映
されたNHK連続ドラマの「ふたりっ子」だという。三倉マナ、カナ扮する
双子が大阪の新世界という町を舞台にはつらつと生きるドラマである。
これで日本中から観光客が来るようになり、一気に町が健全化したと
いう。今はもう、変なおじさんがふらついているようなこともないという。
そこで行ってみた。地下鉄の動物公園駅で降りる。この駅にはホーム
のあちこちに動物の写真やイラストがまんべんなく描かれているのが
とても楽しい。駅を出てしばらく彷徨うと、目の前に通天閣タワーが
現れた。これはわかりやすい。ここら辺の店は、やたらとビリケン
さんを店の前に飾ってある。大阪人はこの変な顔をしたビリケンさん
というものを、とても好きなようである。それにしても、なんばと違って、
新世界というのは繁華街をしばらく歩くとすぐに途切れて寂しくなる。
もしかするとその寂しくなった向うがホントの下町なのかもしれないが、
その奥に行く勇気はない。繁華街の中のどの店に入ろうかと、しばらく
迷う。
やっと決心して、「横綱」という居酒屋に入る。けっこう広い店である。
ずいぶん幅広いメニューがあるようだが、大阪ならば是非とも一回は
串カツを食べなければならない。ということで串カツを食べてチュー
ハイを飲む。串カツはソース二度づけ禁止というのはよく聞いていて、
テーブルにもそう書いてあるが、衛生上も当然だろう。2人で飲んで
眺めていると飽きない。とにかく外国人観光客が多い。次々に入って
くる。何を注文していいのかわからないのか、ある白人のグループ客
はそこら辺にいたアジア系の客のテーブルに行っては、その料理の
名前は何か?とたずね、またその向うの白人客のテーブルに行っては、
そのメニューの名前は何かと次々にたずねていた。店員達も、外国人
との対応に追われていて大変だと思う。とにかく、ひっきりなしに外国人
客が入ってきて変則的な注文をする。お勘定の時にも、ここはテーブル
番号のカードを持って行くシステムなのだが、それがわからないので、
悪戦苦闘していた。その後、ぼくらはお勘定をしたのだが、日本人だと
わかってほっとしたような感じがあった。ぼくらは外に出たが、方向に
迷った。すぐに感じの良かったレジの男の子に妻が駅の方向を聞いた
ら、なんと店の外に出て来て、5,6m先まで歩いて案内してくれたので、
感激した。ものすごく親切である。
そういえば、道頓堀の居酒屋を出る時も、目が合ったので会釈をした
ら、男性従業員もみんな笑顔で挨拶を返し、とても感じがよかったの
を覚えている。
帰りも地下鉄で帰ったが、動物公園駅のトイレの入り口には「ようおこし」
と書いてある。大阪のユーモアである。地下鉄に乗って、大阪なんだから
けっこう関西弁が飛び交っているのかと思いきや、けっこう静かである。
いくら大阪が中国や香港に似ているといえど、やはりここは日本である。
そして、ホテルのある阿波座駅を地上に登った時には、入り口で新入
社員歓迎会でさんざん飲んだのであろう7,8人の男女のグループが
大声で騒いでいたが、吉本の喜劇人がしゃべるようなコテコテの大阪弁
ではない。むしろ語尾は九州弁とも近い。ぼくは九州人なので普段から
「~やろ?」や「そやねえ」を標準語に混ぜて普通に使っているので、
それほど違和感を感じなかったのかもしれない。
(2019年4月)
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