石の2 福島・大内宿


大内宿1 仙台に引っ越してから数年経った頃、ここの写真を何かの
パンフレットでチラと見て、「ここには絶対、行こう」と思った。
まるで、時代劇のセットのような田舎の集落である。
萱葺き屋根の家がずらりと並んでいる。
会津から日光へと続く、会津西街道の宿場町だったという。
よくぞまあ、こういう風景が今まで残ったもんだと感心する。

普通、昔の宿場町といっても、道路はすっかりアスファルト
舗装されていて、本陣くらいが、かろうじて道端に一軒
残っているようなことが多いが、ここ大内宿は、
道路も舗装されておらず、昔の雰囲気が
そのまま残っているのだ。
というのも、明治17年に、別ルートの日光街道が作られたため、
ここはポッカリと取り残されてしまったのである。
それでもこの集落が残ったのは、農家を兼ねていたからだという。
有名な木曽の馬籠宿や、妻籠宿は二階建ての宿泊専門だが、
こちらはどっしりした一階建ての萱葺き屋根である。

土の道路の両側には、石組みの溝に清流が流れ、
夏に来ると、その流水に、トマトやキュウリ、缶ビールなどが、
無造作に冷やされて売っている。ぼくらもトマトを一個づつ買って、
塩をもらい、道端の石に腰掛けて、ガブリとかじりついたが、
その美味かったこと!

萱葺き屋根の民家は、今はほとんどが、みやげ物屋兼食べ物屋さん、
そして、民宿を兼ねているが、軒下に入るとどこも、田舎の親戚の家に
大内宿2 来たような造りで、懐かしい気分にさせてくれる。
重厚な柱や、古い匂いのする畳の間。うーん、日本。
裏庭に回ると、畑があって、花が咲き、山が見える。
また、おばさん達が、土地の言葉をしゃべるのがいい。
ぼくにはさっぱりわからなかったが…。

ここの名物として、テレビの紀行もので、すっかり有名になった、
ネギ1本を箸がわりにして食べるという蕎麦がある。
食べづらいこと、この上ないだろうに、ネギの先を時々かじりながら
食べると味わい深いのだという。ご苦労さんですと思う。

そして、大内宿に来た観光客で、カメラを持っている場合、
いそいそと目差す場所がある。萱葺き屋根の集落を
俯瞰できる高台である。
集落の突き当たりに、神社に登る急な石段があり、
それを登り切って数m先、山道の途中で、
突然、集落の全体を見渡せる絶景ポイントがあるのだ。
もう、みなさん、カメラを構えてパシャパシャ。
それが一枚目の写真で、すっかり有名な風景になっている。
やっぱり、ここからの写真を撮りたくなるよなあ。
ぼくらがここに来たのは2度目だが、以前より、
観光客が増えているような感じがする。
(2007年9月)

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