2の石 北の魚  


北国に来て、まず思い浮かんだ魚は, サンマだ。
 サンマの塩焼きが大好きなのだが、長崎にいた子供の頃、
 食べたことはなかった。東京に来て覚えた味だ。
   学生時代、サンマ定食を初めて食べて、こんなにウマくて、
 しかも、安い食べ物があるのかと、ひどく感心した。
    定食屋では、焼き置きしたものを、レンジでチンしていたが、
 それでもうまいと思った。

サンマ

    それが、こちらでは本場である。安い上に、新鮮である。
 ぜひとも、ガスではなくて、炭で焼いて食べたい。
 ところが、サンマ一匹焼くのに、炭をおこすと、
 炭代の方がはるかに値段が高い。手間もかかる。
 しかも、不幸なことに、優子がサンマが大嫌いなのである。
 焼く匂いを嗅ぐだけでも、イヤだという。
  それでも、たまーに、ガスで焼いてくれるのだが、
 その時には、ものすごくサービスをした、という顔をされる。

 宮城県では、マグロがすごいという。近海マグロの本場だという。
 東京のマグロは冷凍モノだが、こちらは、生マグロだ。
 寿司屋の鼻息も荒いという。
まぐろ  これは食ってみないといけないと思う。
 エリを正して、寿司屋に行った。
 で、大トロを注文し、食べた。
 なるほどうまい。口の中でとろける。しばし唸る。
 ただ、値段も高い。
 値段のことを考えると、ハマチの方がいいと思った。

 正月の魚というと、北国ではシャケ、南国ではブリであるが、
 ハマチは、そのブリの若者である。脂がとても甘い。
 ちなみに、長崎では、鉄火巻きを注文すると、中身は、
鉄火巻  マグロではなくて、ハマチである
 東日本から来た人がビックリするが、長崎人に言わせると、
 「こっちの方がうまかろうが」ということになる。
 マグロも大トロならうまいが、鉄火巻きに使うのは、赤味
 である。赤味ならば、同じ値段のハマチの方がずっと
 うまいと、ぼくも思う。

 だいたい、マグロは北の魚なので、九州人にはなじみがない。
 東京に行って、マグロの刺し身を食べてきた長崎の母が、
 「ベチョベチョして、全然おいしくなかった。やっぱり、魚は
 長崎が一番うまかね」と言っていた。
 九州で、刺し身というと、白身のコリコリして甘味のある、
 ヒラメやヒラマサが主である。ついでに言えば、フグである。

 マグロを北国の魚だと、ぼくが言うのを聞いて、
 「マグロは東京でも一般的な魚だし、別に北国の魚ではない」
 という人がいたが、あのね、
 長崎や福岡からみると、東京は立派な北国なんです。

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