石の2 鳥越俊太郎と、シニア左翼


シニア1 2008年に、当時活躍していた筑紫哲也さんと鳥越俊太郎さんと
いう二人のジャーナリストのことを、このHPで好意的に書いた。
二人共、九州出身だったからだ。当時、筑紫哲也さんは報道番組
ではカリスマ的人気を誇っていたし、その2番煎じのような鳥越さん
は、まだテレビに出始めたばかりで、外地からの報道記者として
しゃべる時にも、九州アクセントが残っており、ぼくはそれに親しみを
覚えていたのだ。そして、その年に、筑紫さんは亡くなり、鳥越さんも
後にガンになったが、それを乗り越えて復帰した。その鳥越さんは
もう、ガンの話ばかりを雑誌に書いたりする過去の人だと思って
いたのだが、2016年、東京都知事選にいきなり出馬してきたの
には驚いた。

本命は小池百合子、そして増田寛也という自民党に対して、鳥越は
野党連合統一候補という好待遇で、一番最後に立候補してきた。
都知事選は知名度が大きいと言われるので、鳥越はかなりの票数を
獲得するだろうと言われ、この3人の戦いになったが、結果は小池が
圧倒的な大差で知事に選ばれ、鳥越は3位で、野党は惨敗だった。
というのも、鳥越は都政に対する何の政策も持っておらず、口を開けば
自民党の安倍政権を軍国主義だとして批判し、安保法案反対だの、
中国は日本に攻めてきませんだのという、とにかく左翼思想を訴える
だけで、それ以外に訴えるものがないために、街頭演説をする度に、
人気が衰えていったのである。

そして、小池百合子の支持には、女性や若者が集まったのに比べ、
鳥越を支持した大半は、団塊世代のシニア左翼だった。つまり、青春
時代に、反体制の学生運動をやった人々なのである。ぼくも学生時代
シニア2 は新左翼の反戦学生だったが、共産主義がソ連と共に崩壊すると、
あれは間違いだったのだとすぐに理解し、反省した。それが当然なのに、
それを間違いだったと認めない人々が今でも存在するのである。多くは
団塊世代の老齢であり、それを「シニア左翼」といい、彼らが鳥越を
支持する母体となったのである。

彼らが唱えるのはバカのひとつ覚えである「戦争反対」である。
どこに「戦争賛成」と唱える人がいるのだろうか?誰でも戦争反対に
決まっている。しかし、戦争を仕掛けようとする国がいる限りは、もし、
やってきたら反撃するぞと構えるだけの装備が必要である。シニア
左翼というのは、その現実がわからない。自分達が昔、多くの仲間と
反権力で運動していた甘美な青春時代が忘れられないのだろう。
戦争反対と叫べば、それが究極の正義だと思っている。鳥越俊太郎を
支持していたのは彼らだけだったので、落選したのは当然である。

そして、象徴的だったのは、彼が元々は、毎日新聞のジャーナリスト
だったということだ。朝日新聞と毎日新聞のイメージを比べると、
朝日新聞というのは、戦後ずっと体制与党を批判する立場に立って
いて、ジャーナリストとして、そういう仕事にプライドを持つあまりに、
共産主義思想寄りになる体質があった。しかし、毎日新聞はそれほど
の左翼偏向ではなかった。筑紫哲也は朝日新聞のジャーナリストであり、
左翼偏向はわかっていたが、鳥越俊太郎は毎日新聞のジャーナリスト
シニア4 だったので、冷静な記事を書ける人だと僕は思っていたのだ。ところが、
今回の都知事選で、鳥越が全くの左翼偏向だとわかってガッカリした。

そして、テレビの報道番組をよおく見比べているとわかるのだが、
朝日新聞と毎日新聞とでは、朝日の方がずっと左翼偏向だが、
テレビでは、テレビ朝日よりも、毎日新聞系のTBSの方が遥かに
左翼偏向なのである。特に、TBSの土曜日の「報道特集」と、
日曜日の「関口宏のモーニングショー」はひどいものである。その
時間帯に他局ではニュースをやっていないので、年配の人間は、
TBSを見るしかない。しかし、それはニュースではなくて、報道特集。
つまり、自局の思想を押し付ける番組なのである。

昔は新聞とテレビでしか、情報を得ることがなく、若者はいくらでも
煽動されたのだが、今ではパソコンやスマホのネット上であらゆる
角度からの情報を得られる時代になった。それが今回の結果に
なったのではなかろうか。
(2016年8月)


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