石の2 魚肉ソーセージの思い出


最近、コンビニで「懐かしい味の魚肉ソーセージ
ソーセージ2 というのが、売り出されていて、え!ほんとか?と
妙にワクワクして、さっそく買ってみた。
そして一口かじって、「おお!これだ!」と叫んだ。
たぶん、日本全国で、団塊の世代の人々
(昭和20年代生まれ)がこれを買って、
同じように、顔をほころばしているはずである。
そして、多分、まとめ買いをして
少しづつ、うれしそうにかじっているはずである。

魚肉ソーセージといっても、最近のものは、
スケソウダラなどの安い材料を使っているので、
ボソボソして、ちっともうまくないが、
ぼくらの時代の魚肉ソーセージは実は
マグロ肉で作られていた。

これには、わけがある。
戦後復興もメドがつき始めた日本で、
冷凍技術を備えた漁船団が、
マグロの遠洋漁業に本格的に乗り出した頃、
1954年、アメリカが太平洋のビキニ諸島で
ソーセージ 水爆実験をやった。
その放射能を浴びた、第5福竜丸が
遠洋マグロ漁船だったのだ。
放射能を浴びた生命体がどうなるかは、
日本人がよく知っていた。
これで、マグロの値が大暴落し、
大量の在庫が発生した。
でも、全てのマグロが放射能を
浴びたわけではない。

どうする?ということで考え出されたのが、
マグロを使った魚肉ソーセージだった。
まだ、家庭には冷蔵庫なんてない時代だ。
常温で半年は大丈夫な加工品にしよう。
しかも、かまぼこではなくて、
肉のイメージのソーセージにしようとなった。
本物のソーセージというのは、
まだ、ほとんどの日本人が知らなかった。

豚肉や牛肉ですら当時は、まだ値が高く、
ステーキといえば、もっぱら
安い鯨肉ばかり食べていた時代だ。
手頃な値段の魚肉ソーセージは、
立派に、お肉の代わりになったのだ。
ソーセージ3 そして実際、美味かった。

ぼくらの世代は、お弁当に、ご飯と玉子焼きと、
魚肉ソーセージの醤油炒めが入っていれば
文句のないごちそうだった。
日水さん、マルハさん、ありがとうだった。

ところが、中学生の後半くらいからだろうか、
豚肉で作った赤いソーセージが
安く市場に出回るようになった。
本当のソーセージというのは、豚肉で作る
もんであって、魚肉ソーセージというのは、
いわば、そのまがいもんであると聞いて、
ぼくとしては、カルチャーショックだった。

やがて、日本人も牛や豚のステーキを
日常的に食べられるようになり、
マグロも冷凍技術や冷蔵庫の普及で、
寿司ネタとして珍重されるようになり、
マグロの値も上がって、
マグロのソーセージは消えた。

魚肉ソーセージはスケソウダラなどの
安い魚肉に変わり、形だけは残ったが、
そのうち消えていくだろうと思われた。
ところが、飽食の時代になって、
魚肉だけのソーセージは逆に
ヘルシーな食材ということで、
見直されているというのだから、わからない。
でも、昔の魚肉ソーセージと比べると、
味も舌触りも一等落ちる。

あのおいしかった昔の魚肉ソーセージを
もう一度食べたい!とぼくらは常々、
密かに思っていた。
ソーセージ4  その願いに応えて出たのが、今回の
「昔懐かしい味の魚肉ソーセージ」なのだ。
マルハ食品が、魚肉ソーセージ50周年記念
ということで、コンビニだけで売っている。
1本百円。
うれしかった。マルハさん、ありがとう。

ただ、言わせてもらえば、
当時の100%そのままの味ではない。
覚えているのは、マグロを中心素材に、
たしか、ウサギ肉や、鯨肉も混ぜていたはず
なのだ。苦し紛れのやり方だったのだろうが、
それがまた、味わいがあったのだ。
 今回発売の袋を見てみると、マグロは
20%しか使われていない。
たのむ!値段が高くてもいいから、
老後の幸せのために、昔そのままの
マグロの魚肉ソーセージを作ってくれえ!
(2005年)

■その後、マルハのそのソーセージは半年で消えたが、
 2011年現在、セブンイレブンで普通に売っている
 魚肉ソーセージは昔の味にかなり近い。

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