石の2 小京都と小江戸


小京都1 仙台から山の方へと、行楽でドライブする時に、
いつも通り過ぎる村田町というのがあるが、
ここは宮城県の小京都なのだそうである。
あんまり地味なので、そう感じたことはなかったが、
ポスターを観ると、全国京都会議によって正式に
認定されている小京都なのだという。
全国京都会議などと聞くと、学生運動世代の僕などは、
他に、小京都連絡会議とか、革命的小京都同盟などの
セクトに別れて戦っているのではないかと、
つい思ってしまうが、もちろん、そういうものではない。

よくよく聞いてみると、小京都というのは、
本来、どこが名乗ってもよいのだが、とりあえず、
観光のために、本家・京都を親分にして、まとめて宣伝
しようと、認証制度を設けているのだという。
全国に26ヶ所あり、福岡県では、秋月の一ヶ所だけなのに、
宮城県では、その村田町の他に、岩出山町と2ヶ所もある。

しかし、秋田の角館市、石川の金沢市、岐阜の高山市
などの堂々たる観光地に比べると、同じ小京都でも、
村田などは、地元民の人通りすら少ない田舎町である。
しかし、よおく見ると、江戸時代に紅花の交易で栄えた
商人町の風情があり、立派な蔵を持ったお屋敷が
埋もれるように残っているのである。
春の雛祭りには、そういう古い商家が座敷を公開して、
小京都2 江戸時代に京都から買ってきた古い雛人形を披露する。

紅花というのは、鋭い棘のある花で、この地方の娘が
手を傷だらけにして花弁を摘んで、山形の酒田港から
京都に運ばれ、京女の口紅になった。
大変、高価に売れたもので、村田商人はそれで、
京都の名高い人形職人の雛人形を買って帰り、
雛祭りの時に、村の娘達を招いて見せてあげたという。
その風習を、今、町おこしにしている。

全国京都会議のリストを眺めていると、26の中に
小江戸を兼ねる」というのがある。栃木県栃木市だ。
小京都に認定されるには、京都と関連があるという
条件があるのだが、古い街並が残されていても、
必ずしも京都とは縁がなく、むしろ、江戸の風情が濃い
小京都3 という町もある。それが、栃木県の栃木市、佐野市、
そして、埼玉の川越市である。それゆえに、こちらは
小江戸と呼ばれている。

ぼくらはバス・ツアーで、栃木にも川越にも行ったのだが、
それぞれ、街並みを小江戸として整備していて、
それなりに見事な観光地になっていて、楽しかった。
特に、川越市の一番街というのは、蔵造りの商人街で、
観光客がゾロゾロと歩いている。
後ろから歩いていた東京からのギャル二人連れが
「川越って、観光地なのねえ!ウソみたい」と叫んでいた。
いや、実際、ぼくの感想もそうだった。
川越のイメージとしては、ダ埼玉の一部であり、
最初は、芋しか思い浮かばなかったのだ。
しかし、そのイメージの半分は当たっていた。
風情のある商家風のみやげ物屋で売られているものの
大半が、芋ようかん、芋かりんとう、芋まんじゅう、芋○○、
オール芋なのである。
小京都4 やはり、川越は、芋から逃れられないのだと思った。




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