石の2 飛騨高山に行く

高山1 金沢からのバスツアーで飛騨高山に行き、2時間くらい市内を散策した。
小京都として有名である。古い町並が多い。しかし元々は、飛騨の山中
なので、交通の便も悪く、米の生産もなく貧しい土地だったはずである。
しかし、秀吉の配下であった金森長近という武将がこの領地を任されて
やって来ると、途端に近辺で金、銀が発見され、いきなり潤ったのである。
そこで京都が好きだった金森長近は、高山を京都風にしつらえることに
専念した。そのために見事な小京都が出来上がったのである。

上三之町の古い町並通りを歩くと、伝統的建造物群保存地区になって
いるし、どの店もじっくり眺めたいほどに素晴らしい。多くはみやげ物屋や、
酒造店や甘味処の店になっているが、飛騨牛をメンチカツにしたり、寿司
にしたりする店には行列が並んでいる。ここもとにかく、外国人観光客が
多い。日本情緒の街並みには、外国人観光客が群れるのである。

金森長近は秀吉の下、高山で6万石の大名になり城下町を築いたが、
先見の明のある人だったらしく、やがて徳川家康に近づいて行き、
関ヶ原では徳川方についたのである。そのために金森氏は存続したが、
金銀が出るために、やがて金森氏は東北の山形に国替えさせられ、
高山は幕府直轄領になったのである。ところが皮肉なことに、高山が
幕府の直轄領になった頃から、金銀の採掘量が減った。

高山2 ただ、幕府直轄領になると、武士を養う経費がかからないために、税も
安くなるので領民が豊かになる。しかも、徳川幕府は儒教を採用したため
に、商売を蔑視するようになり、逆に商人は自由に経済活動が出来るよう
になったので、町民が武士を差し置いて軒並み金持ちになるのである。
これは、同じ幕府直轄領だった長崎も、大分県の日田もそっくり同じで
ある。そのせいで長崎には「おくんち」という贅沢な祭りが育ったように、
飛騨高山にも「高山祭り」という華麗なものが起こった。まるで京都の祇園
祭りのような山車が12台も連なるような華麗さである。それを春も秋もやる。
最初にそのポスターを見た時、たかが人口9万人の町にどうして、こんな
すごい祭りが育ったのだろうと不思議に思ったのだが、それは幕府直轄領
だったせいである。

飛騨高山市は、京都風の優雅な文化が栄えた田舎町だが、実はその
隣に、飛騨古川という、もっと古風な街並みの町がある。ぼくはここを
YouTubeの動画でたまたま観て、なんて綺麗な町並だと驚いたのだが、
司馬遼太郎さんもこの町のことを「街道をゆく」シリーズの「飛騨紀行」の
中に書いていて、「みごとなほど、気品と古格がある」と絶賛している。
高山3 さらにここは実は、2016年に大ヒットしたアニメ映画の「君の名は。」の
舞台なのである。駅のホームや、駅前の風景、主人公の若い女性、三葉
(みつは)が巫女として仕えていた宮水神社のモデルが、飛騨古川の気多
若宮神社と、飛騨高山の日枝神社だと言われている。そのために、ここ
飛騨古川を映画のロケ地の聖地巡礼として訪れるファンも多いのである。

飛騨高山は一ヵ月くらい住んで歩き回っても楽しいかもしれないと思った。
(2019年5月)

石の2 目次に戻る