2の石 東北弁


東北弁1   早口でナマられると、ヒアリングが困難である。
  こちらに引っ越してすぐの頃、一人で留守番をして
  いたら、こちらの母の友人から電話がかかってきた。
   何の気なしに取ってしゃべってみたが、
  相手がもろ東北弁なので、よくわからない。
  ズカンがズカンがというので、
  「は?図鑑ですか?」と聞いたら、
  「いんや、いつずぬずのズカンだべっちゃ」と言う。
  「ああ、時間ですか」と聞き返すと、向こうも
  「そうそう、そのズカンだべっちゃ」
  と喜んでくれた。
  ただ、その先を聞いたが、またわからない。
  結局、 相手が、またかける、ということになって
  受話器を置いたが、冷や汗ものだった。
   ただ、若い人どうしは、普通に標準語をしゃべる。

  これは東北弁だと、東京時代から知っていた
  のは、「投げる」だ。
  東北では「捨てる」という意味に使われる。
  だから、 「これ投げて」と言われて本当に投げたら大変なことになる。

  一方、長崎弁については、ぼくが今でも直らない言葉に、「はわく」がある。
  標準語では「掃く(はく)」と言う。 ホウキで床をはく、というのを長崎では、
  「床をはわく」と言うのだ。命令形は「はわいて!」である。
   東京で、コーヒースタンドの店長をやっていた時、新しいアルバイトに
  「そこ、はわいといてね」と言ったのに、彼がグズグズしているので腹が立ち、
  「はわいて!」と怒鳴ったことがある。すると、彼は古株のアルバイト
  のところへ行って、「ハワイがどーしたのか?」と聞いている。
  古株はうなづいて、
  「マスターは九州の人なんだよ。はわくというのは、はくという意味」
  と教えていた。恥ずかしかった。

    また、長崎で頻繁に使う長崎弁に、「ほがす」がある。
    「穴をあける」と言う意味である。「穴をほがす」と使う。
    「福田に行く新しか道の出来たて?」
トンネル28   「うん、トンネルば、ほがしたとよ」という風に使う。
  靴下に穴があいた場合は、「穴のほげた」と言う。
   先日、ぼくが長崎で
  「ほんと、長崎では、ほがすば、よお使うねえ」  と言ったら、
  みんなに 「じゃ、ほがす、を標準語で言うたら、何て言うと?」と
  不思議そうに聞かれた。
  「穴をあける」と答えたら、みんな、キョトンと
  していた。わかる。穴をあけた、では何か
  力が抜けるのだ。
  パンツをはき忘れたような気分。
  やはり、長崎では穴は、
  ほがす、ものである。

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