石の2 仙台人よ、カササギを知っているか?


バードウォッチングに興味を持ったのは、30代の頃だ。
鳥1 一回だけ、日本野鳥の会の探鳥会に参加して、
その後は、夫婦で、双眼鏡を買い、野鳥の会発行の
「山野の鳥」「水辺の鳥」の二冊のハンドブックを買って、
あちこちを二人で、バードウォッチングして回り、
しばらくは、けっこう楽しめた。

バードウォッチングの入り口の最初は、カラスとハトである。
カラスには、ハシブト・カラスと、ハシボソ・カラスの2種類がいる。
ハシブトはカアーと鳴き、ハシボソはガアーと鳴く。
ハトにも2種類あって、ドバトと、キジバト
寺社や公園でたくさん群れているのが、ドバト。
郊外や林に一匹だけでいるのが、キジバト。
ドバトの羽根はもっぱら灰色だが、キジバトの羽根は少しきれい。
キジのような色彩がある。
鳥2 この二つのことを知るだけで、けっこう視界が広がる。

次に身近にいる野鳥が、スズメは別格として、ヒヨドリである。
え、何?ヒヨドリって、と最初は思ったが、観察していいると、
意外と、どこでも、しょっちゅう見かける野鳥なのだ。
灰色っぽく、ピーピー鳴いて、住宅街の木から木へと、
群れで飛び回っては、赤い実などを食べている。
いざ気づいて見ると、なるほど、けっこういるもんだ。
そして、このヒヨドリは、チャーリーとスヌーピーの漫画の
中に出てくるウッドストックのモデルと言われている。
形は違うが、たしかに、頭の毛が少し毛羽立っている。

年中いる鳥としては、空高く舞うトンビがいる。
昔から、油揚げが好きだと言われてきたが、最近は、
海水浴場で、人間が片手に持ったハンバーガーまで
掠め取るということで、話題になっている。
ワシやタカの同類だが、実は尾っぽの形が違う。
それでもって、一目で区別ができる。
右図のように、尾っぽが凹んでいる。

春を報せる野鳥というのもいる。
代表的なのは、ホーホケキョと鳴くウグイスだが、
ウグイス自体を見るのは、ほとんど無理である。
鳥3 小さい鳥だし、警戒心が強いので、枝の影に隠れている。
むしろ、春の鳥といえば、ツグミと、ヒバリである。
ツグミは、春に、土の上を一匹で歩いているのを見かける。
広い場所で、散歩しているツグミは、けっこう目立つものなのだ。
そして、ヒバリは、中空に留まってピチピチピチと鳴き続ける。
晴天の日に、手をかざして空を眺めると、空の黒い一点として
同じ位置で羽ばたいているのを、やっと見つける。
それがヒバリだ。

そして、バードウォチャーの初心者に最も人気があるのが、
シジュウカラ。黒と白と黄緑で、実にカラフル。
スズメと同じ大きさで、とても愛らしくてきれい。
住宅街や公園の、樹木の上で鳴いていたりする。
そして、セキレイ。長い尻尾をヒクヒクさせているスズメ大で、
これは、仙台の市鳥でもあり、伊達政宗の花押にもなっている。
川辺を好み、これも住宅街の道路上で、頻繁に見かける鳥である。
あと、ツバメは初夏に、軒先で飛び交う。

シジュウカラ と、これだけ知ったところで、充分なのである。
これだけで、世界の見方が変わると思う。
いろんな野鳥がぼくらの周りにいるんだなあ!と驚く。
世界は、こんなに豊かなんだと感心すると思う。
最初は、双眼鏡で眺めていたが、わかってくると、
もう、双眼鏡は要らなくなる。
ことさらにバードウォッチングをする必要もなくなってくるのだ。
そして、身近な世界が急に立体的になってくる。
野鳥を知るだけで、世界に色彩が増えた気がする。

ついでだが、夏の夕方になると、川や池の近くでは、
コウモリが群舞する。意外に知らない人が多い。
なんとなく、ツバメかスズメと思ってる人が多い。
鳥4 しかし、あきらかに飛行の仕方が違うのだ。
とても鋭角的に飛ぶ。キュッと曲がるのがわかる。
彼らは、同じように水辺に夕方から群舞する蛾や羽虫を
食べるために、飛び回るのだ。
東京でも福岡でも仙台でも、夕方には普通にいるのに、
植物全般に詳しい78歳の母は知らなかった。
世界は、気付かない生き物であふれているのだ。




鳥5 付録「カササギと七夕の話」……

… 仙台の八木山動物園に入ると、入り口左手に大きな鳥の
ケージがあって、そこは、カササギ専用になっている。
カササギというのは、カラス大で、黒と白のきれいな鳥である。
そして、仙台では特別待遇である。
というのは、七夕の物語に関係があるからだ。
実は、織姫と彦星のデートを取り持ったのが、
このカササギなのだ。
この鳥は、大陸の鳥であり、韓国では国鳥であり、
鳥6 日本では、九州の北部にしか生息していない。
秀吉の朝鮮征伐の時に、持って来たらしいのだ。
それが、かろうじて、佐賀と福岡だけで繁殖している。
ぼくらは、福岡時代のアウトドアでわりと、見かけていたが、
仙台の人は野鳥としては、見かけることがないので、
こうして、動物園の中に飼われているのである。
七夕の物語が、中国から、韓半島を経て伝わった
ということを教えてくれる鳥でもある。






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