石の2 遠刈田温泉の大道芸フェスティバル


遠刈田2 仙台の郊外には、3つの有名な温泉峡がある。
秋保(あきう)温泉作並(さくなみ)温泉、そして
遠刈田(とおがった)温泉。いずれも、
宮城蔵王の山ふもとにあり、車で1時間ほど。

秋保、作並の2つは、どちらかといえば、
大型の温泉ホテルが、どかんどかんと立ち並び、
歩き回るのも、それぞれの館内で完結というタイプで
ちょっと味気ない気もするが、高級感があるし、
渓流沿いの露天風呂など、野性味もあるので、
遠方からの年配客には、つい、こちらを勧めてしまう。

それに比べて遠刈田温泉は、やや地味である。
安い共同温泉浴場を中心に、旅館があり、
みやげもの屋があり、豆腐屋、よろず屋があり、
こけし職人の店があり、温泉神社もあり、
小さな町ながら、歩き回ると、それなりに楽しい。
ただ、蔵王エコーラインや、スキー場への
通過点のような町になっているので、
町おこしとして、「大道芸フェスティバル」を始めた。

これがけっこう楽しい。
遠刈田2 ジャグリングや、アクロバット、パントマイムなど、
世界中を流して歩いている大道芸人というのは、
国籍を問わず、けっこう多いらしい。
彼らを3,4組呼んで、それに地元の太鼓やら、
バンドやミュージシャンを加えて、毎年6月にやる。
2005年で、8回目になる。

町内のメインストリート、といっても3百mほどの狭い
車道を、車通行禁止にして、あちこちでやる。
ステージではなくて、路上というのがいい。
だいたい30分くらいのショーを場所を変えてやる。
数十人の観客が丸く囲んで、前の客は座り込む。
このパフォーマーとの近さが、なんともいい。
ぼくらが観たのは、サンキュー手塚とか、ガーマルチョボとか、
この世界では、よく知られた大道芸人だった。
わりと、質の高いパフォーマーを揃えているようだ。

彼らを囲んだ観客からは、常に笑いが絶えない。
実によく練られたショーである。
最近は、テレビで漫才芸人が早口でしゃべり、
たわいもないギャグで受けているが、こちらは、
基本的に、言葉はほとんど使わないので、
うまく構成されていないと、これだけの笑いは取れない。
その意味で、上等な芸なのだ。

遠刈田3 基本にあるのは、白人特有のユーモアである。
例えば、中国雑技団など見ても、どこにも
笑いの要素がないが、白人の場合はアクロバットを
やっても、それを材料にして、常にどこかで、
笑わせようと仕掛けてくる。
それが大道芸を魅力あるものにしている。
日本人の大道芸人も、それを見て育って、
ユーモアに磨きをかけているので、おもしろい。

このひねくれ者のぼくですら、大口を開けて笑い、
追っかけをしてしまうほどである。
テレビで観ても、そうは感激しないだろうが、
目の前で生でやられると、えらい感激する。
ショーが終ると、芸人は帽子を差し出すのだが、
優子は、5百円玉を入れにいった。

商店街では、街頭であらゆる食べ物を安く
売っていた。豆腐屋さんは、大きな豆腐を
一丁まるごと、カツオ節と醤油をかけて、はい100円。
喫茶店が、ホットドッグ200円。精肉店では、
牛肉コロッケ揚げたて、はい100円。
みんな人気でよく売れていた。

遠刈田5 フェスの最後には、サンバのリズムで行進。
笛と太鼓のチームが、ドンドンと激しく打ち鳴らし、
リオのカーニバルを思わせる、踊り子が3人、
ほとんどTバックの水着姿で、踊りまくる。
本場なら、誰もが一緒に踊り出すんだろうが
日本人が、そう急には、ラテン系にはなれない。
おじさん達、みなさん、お尻にみとれてました。
そして、携帯電話のカメラで撮りまくってました。
サンバのチームといっても、みんな日本人。
踊り子も日本人、見る方も日本人だから、
お互いに恥ずかしそう。
でも、踊り子の作り笑いが、とても麗しかった。

駐車場から車を出すと、遠くの分岐で交通整理を
してた町の若者が、そろそろ帰るところでした。
彼らは、祭りを見れなかったんだと思うと、
町おこしにかける情熱を見る思いがした。
また、来年も来ようと思う。
   (2005年6月)

…この時、無料だった2人組の「ガーマルチョバ」は
 2018年現在、日本中の劇場でショーを行い、
 一人6000円の入場料を取るまでになった。

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