石の2 長崎ちゃんぽん、皿うどん


ちゃんぽん4 長崎の名物料理といえば、何を差し置いても、
長崎ちゃんぽんと、皿うどんである。
こんなにうまいものはない!と長崎人は思う。
ただ、この二つ、長崎の家庭料理ではない。
長崎の友人の家に行けば、そこの奥さんが
「では、腕によりをかけて作りましょう」
というものではなく、あくまでも店屋物である。

遠方からお客さんが来た場合、昼食には、
皿うどんを出前で頼むことが多かった。
すると、大皿で持ってくる。
それをテーブルの真ん中に、どんと乗せ、
各自、小皿に盛り分けて、ウスターソースをかけ、
ビールを飲みながら、いただくのが定番である。
揚げたパリパリの細めんに、肉や野菜のあんかけの
汁がとろりとかかり、それにウスターソースの辛みが
ほどよく絡み、長崎ならではの、ごちそうである。

ちゃんぽん5 ちゃんぽんの場合は、麺がのびると美味くないからか、
こちらは、お客さんを連れて、店に行くことが多い。
新地(しんち)の中華街なら、どの店でもうまい。
ぼくの子供の頃の印象では、ちゃんぽんは気軽に、
店にでかけて食べるものだが、皿うどんは一人で
食べるものではなく、必ず大勢で囲むものだった。
だから、東京時代、久しぶりに長崎料理の店に入って、
一人前の皿うどんを見て、へえ、と思った。

それより、東京でショックだったのは、まがいものである。
ある日、近所の中華料理店のメニューに突然、
「長崎ちゃんぽん」というのが、加わったので、
喜び勇んで注文してみて、出てきたものに仰天した。
まず、スープが醤油味である。麺はラーメンの麺である。
肉と野菜を炒めてかけてあるのはいいが、なんと
あんかけしてある。なんじゃこりゃ!と思った。
どうやったら、ここまで勘違いできるのかと思う。
東ヨーロッパの日本料理店で、寿司を注文したら、
オニギリが出てきたという話があるが、そのレベルである。
ちゃんぽん2 金のない貧乏学生の頃だったので、全部食べたが、
ものすごくみじめに感じた。

そして、
同じようなことは、今でもほんとに多いのだ。
長崎を出て、北に行けば行くほどすごいことになる。
福島の道の駅のレストランで、同じようなものに出会い、
長崎ちゃんぽんと書いてあった時には、さすがに、
後で、メールで苦情を送った。

長崎ちゃんぽんと皿うどんというのは、本物を作ろう
と思えば、そんなにむずかしいものではない。
お店ならば、とんこつスープを基本的に作ればいいし、
家庭ならば、「みろくや」の袋入りを使えばいいのである。
麺とスープが入っていて、作り方も書いてある。
下手なことをしなければ、立派な本物が出来る。

ちゃんぽんも皿うどんも、具材はほぼ同じである。
豚バラ肉、玉ねぎ、キャベツ、かまぼこ、ムキエビ、
カキの剥き身か、アサリの剥き身、それだけでいい。
それら具材を中華鍋で、ラードで炒めて、
ちゃんぽん6 「みろくや」のスープを水で溶いて加え、
ちゃんぽん麺を入れ、一緒に煮立たせれば、
ほとんど、本物のちゃんぽんが出来上がる。
皿うどんの場合は、やはり「みろくや」の、皿うどんの
スープの素を使えば、あんかけになるので、それを
カリカリの麺にかければ、出来上がりである。
うん、美味い!

「下手なことをしなければ」と書いたが、
東日本人に「みろくや」の袋を渡すと、すぐにその
下手なことをしたがるのが困る。つまり、
ホタテ貝を入れたり、コーンやカニや、キノコなどを
加えたがるのだ。えーい、余計なことをするな!
それじゃ、寄せ鍋麺だろうが!
最後に白ネギの輪切りを乗っけるのも絶対だめ!
ラーメンじゃないんだから…
だめなの!
ということで、我が家では、ぼくが「みろくや」の製品を
使って、定期的に本物のちゃんぽんと皿うどんを
作っていて、妻の優子は大喜びであるが、
純粋の東北人である義母の感想はというと
「野菜が多くていいね」止まりである。どうも、
ちゃんぽん7 とんこつスープが、舌に慣れないらしい。

それにしても、長崎人としては、フラッと出かけて、
外食で「ちゃんぽん一つ」と注文して、
すぐに食べられるのが、果てしない夢である。
今日は食欲がないという時に、よく、そう思う。

ちゃんぽんのチェーン店としては、長崎発の
リンガーハット」が、少しづつ東進してはいるものの、
(この店、味としては、長崎人の評価は低いが)
2005年の時点では、茨城どまりである。
仙台まで辿りつくのは、いつのことだろうか。


(2010年、ついにリンガーハットが仙台に進出した!
 イオンモール名取エアリのフードコート内であった。
 おお!ついに来たか。さっそく食べてみたが、
 何か違うような…。優子が「ゴマ油が入っているんじゃない?」
 という。ちゃんぽんにはゴマ油は絶対ダメなはずだが…)
(という事で問い合わせてみると、ごま油は使っていませんと
 いうことだった。どうもラー油らしい。)


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