石の2 東京へ花見に行く


上野1 久しぶりに東京へ花見に行った。仙台からの日帰りバスツアーである。
バスツアーというのは事前に申し込むので、花見には当たり外れが
あるものだが、今回は運よく満開であった。東京の桜は仙台より一週間
早いので、桜のタイムトラベルが出来る。つまり、仙台を出発する時に
桜はまだ開花したばかりだが、バスが南下するにつれて、沿道では
桜の開花が進み、東京に到着すると満開。そして、仙台に帰り、翌朝
目覚めると、桜はまだこれからというわけだ。

今回の花見は千鳥ヶ淵と上野公園と浅草に行ったが、とにかく東京の
人の多さよ。ぞろぞろと歩いていて、こっちから向こうに行くだけで一苦労
である。そして外国人がとにかく多い。テレビのワイドショーでは、中国人
の爆花見が話題になっていたので、中国人だらけかと思っていたが、
意外にも東南アジアの人がけっこう多い。もちろん白人も多いし、あらゆる
人種が多い。仙台で見かける5、6年分の外人を一日で見てしまった。

上野公園では、ブルーシートを拡げて宴会をする中に、着物を着て日本髪
を結っている日本舞踊の若い女性のグループがいて、注目を集めていた。
時々踊ったりするものだから、日本人はもちろん、多くの外国人がスマホの
上野2 カメラを向けていた。扇子を開いたり閉じたりして回りながら踊る様はとても
優雅であり、これには感心した。途中、回す扇子を落としても、キャーッと
笑いながら続けていたので、半プロなのだろうが、とても好感がもてたし、
翌日の東京の花見のニュース映像では、どの局も彼女らを映していた。

バスツアーの最後は浅草であり、こちらは花見というよりもオマケのような
ものだったが、これが楽しかった。雷門からの仲見世通りは、ほとんど先に
進めないほどの混み具合だったが、それよりも「花やしき」周辺の歓楽街に、
前にはなかった、いろんな和風の趣向のおもしろい店が増えていて驚いた。
ぼくは40年前に、浅草松屋内で1年間、コーヒー屋の店長をやっていたので、
ある程度、浅草の賑わいは知っているのだが、当時と比べてもはるかに
おもしろくて、宝箱をぶちまけたようであり、これならば、外国人が喜んで来る
のがわかる。浅草寺周辺が、見事な浅草ワールドになっていた。さらに、
その雑踏の中を、けっこうな数の人力車が走り回っている。眺めていると、
旧力士の把瑠都が、美人アナウンサーと一緒に人力車でやってきた。その
前の人力車にはカメラマンが乗っていて撮影していた。ぼくらも背景に映って
上野3 いたはずなので、その後しばらく何の番組か探したがわからなかった。

伝法寺通りの先に行くと、道端に多くの居酒屋が軒先にテーブルや椅子を
せり出して営業していた。この日は花冷えだったので、どこもビニールシート
で覆いをしていたが、その中はどこも満員で、生ビールやホッピーや酎ハイに
おでんやモツ煮込みなどで盛り上がっている。昔は、おっさんばかりだったが、
今は若い男女のグループがとても多い。外国人もいる。まるで、博多の屋台
のようである。灰皿も置いている。きれいな店舗も増えたが、こういう昔ながら
の店がとても人気なのである。やはり浅草、下町である。ぼくら夫婦もこういう
店で一杯やりたかったが、なにしろ日帰りバスツアーなので時間がない。
せいぜい、バスの中で缶チューハイを飲むだけである。東京から仙台までは
東北道を使って5時間はかかる。帰りは暗闇の中を眠るばかりであった。
(2016年4月2日)




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