石の2 福岡でホークス、仙台でイーグルス


野球1 思いがけず、二度もご当地球団の誕生に
立ち会うことになってしまった。
1988年の福岡・ダイエーホークスと、
2005年の、仙台・楽天イーグルスである。

ダイエーホークスが誕生したのは、ぼくらが
東京から福岡に引っ越してから2年後で、
最初は、屋外の平和台球場でやっていた。
市民は、かつての西鉄ライオンズの活躍を
夢見たが、これが、からきし弱かった。
戦えば負けるで、当初は目も当てられなかった。

それが少し強くなったのは、そのまた2年後に、
福岡ドーム球場が完成してからである。
このドーム球場は素晴らしいものだった。
外観も巨大だが、観客で埋め尽くされた内部は
きれいで華やかで、うわお!だった。
ぼくらは何度も通ったが、夢の空間だと思った。
ぼくらが座るのはいつも内野席だったが、
実は、お金を払ったことはない。

というのは、優子が、ホークス関係者だったからである。
というか、ドーム球場建設にあたり、ダイエーが
現地に作った建設運営のための会社のスタッフに
応募して、採用され、就職したのである。
野球2 だから、時々回ってくる、関係者パスで
ぼくらは観戦していたのである。
その夢の空間で応援するうちに、
ホークスは段々と強くなってゆき、
遂に、1999年、念願の初優勝を果たした。
福岡では、その瞬間、那珂川に若者が飛び込むわ
ビールかけするわ、市民の喜びが沸騰した。

しかし、なんとその年に、ぼくらは仙台に
引っ越していたのだ。
案の定、仙台はシーンとしていて、
喜びを分かち合える仲間もいなかった。
あと一年、福岡にいればと、寂しい思いをしたもんだ。

野球3 ただ、優子がホークスの会社を辞める時、
後に昇進して取締役になる人も含めて、
ドーム内のスポーツバーで、なかなか盛大に
送別会をやってくれたのが、良い思い出だ。

そして、今やホークスは常勝軍団である。
ぼくらは、今でもホークス応援歌を歌えるし、
ドライブの時に、そのCDをかけたりするが、
今年、ついに、その愛するホークスの
親会社がダイエーからソフトバンクに変わった。
倒産した小売業のダイエーから、
飛躍的に伸びているIT企業に変わったわけで、
喜ばしい結果となった。しかも、その社長の
孫正義は、福岡県の出身である。
応援歌のメロディーも変えないという。
野球4 孫さんは、優しい人である。

そして同じ年に、仙台に「東北・楽天イーグルス
の誕生である。盛り上がっています。
初戦の千葉・ロッテマリーンズとの対戦では、
辛勝したものの、2戦では、27-0という大敗。
やれやれ。でも、最初はそれでいいんです。
ダイエーホークスも、最初はそうだったんだから。

ただ、福岡ドームのおもしろかった思い出として、
バックネットの巨大スクリーンを使った、ある遊びが
とても印象に残っている。
それは、敵側の投手交代のウォーミングアップの
ちょっとした時間にやっていたのだが、

カメラが客席を舐めまわすように動き、
野球5 スクリーンに映し出していくうちに、ふと、
あるカップルを選んで大写しにして、
画面の中で、キスをするように迫るのである。
周りは拍手ではやし立てる。すると、やる。
いやあ、みなさん、ほんとにやるんですね。
もう、ドーム内が大拍手。大盛り上がり。
最初は若いカップルに照準し、
次はもうちょっと、年のいったカップル。
それでもみなさん、やりました。ブチュっと。
大拍手。たいしたもんです。
その度に、投球練習をやっている敵側の投手が
気になってスクリーンを振り返る。
ほとんど、練習妨害になっていた。
でも、観客は大喜び。
野球6 不倫カップルに照準が当たったら、どうするんだろ?
くれぐれも、不倫カップルは来ないようにして下さい。

そういうことを、仙台のフルキャスト・スタジアムでは
スクリーンを使ってやることはあるだろか?
また、仙台のカップルが同じように、
すぐにキスをするだろか?
少し興味がある。
(2005年)


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