石の2 「山形県というのは何かおもしろい」


東京や九州にいる頃は、山形県というと
月山 ほとんど、何の印象もなかったが、
実際に隣の仙台に住んでみると、行く機会も多く、
なかなか、魅力的な土地である。

まず、里山の自然がほれぼれするほど、美しい。
秋田もそうだが、こういう東北の自然は、いつまでも
そのまま残っていて欲しいと思う。
九州の田舎の自然とは全く違うのだ。
多分、雪と、落葉樹の自然林の多さの違いだろう。

そして、山形というと、こちらではまず「そばの国」である。
そばといえば、信州・長野だと思っていたが、
東北では、山形がブイブイいっている。
仙台人でも、そば好きは峠を越えて、山形へ行く。
「そば街道」というのがあって、道沿いに
民家がそのまま蕎麦屋になった店が点々と並ぶ。
なんだか、田舎の親戚の家に上がるような
気分にさせてくれる。

ただ、そのソバは、信州の更科(さらしな)そばとは違って、
素朴で荒くて、太くボゾボソとしていて、
穀物である!と怒りながら出てくるような、
田舎そばである。
板そば ざるなんて邪道だとばかりに、板に盛られてくる、
板そば」というのが、メインである。
その上に、究極のメニューとして
そばがき」というのもある。
これは、そばを切らずに、丸いかたまりのまま出してくる。
それを、箸でちぎってはタレにつけて、食べるのである。
形としては、そば食の元祖だろう。
繊細な更科そばが好きな人は、裸足で逃げると思う。

また、「ラ・フランス」という、洋梨の名産地でもある。
梨といえば、鳥取の「二十世紀梨」のような
硬くてシャリシャリした梨しか知らなかったが
ラ・フランス ラ・フランスというのは、とても甘い香りの、
実が溶けるような、フランス原産の珍しい梨である。
明治のある時期に輸入されて、土地のものとした。
ぼくは、仙台に来て、初めて食べた。

また、チェリーの一大名産地でもある。
チェリーというと、クリームソーダの飾りに使う
缶詰のチェリーか、黒っぽいアメリカンチェリー
くらいしか知らなかったが、国産の実にきれいな
高級チェリーが、山形の名産品なのである。
佐藤錦」といって、山形県の佐藤さんという人が
開発した品種である。

山形県では、初夏になると、さあ、
さくらんぼの季節だと、県内が騒然となる。
特に寒河江(さがえ)の道の駅では、
さくらんぼ チェリー祭りが催され、さくらんぼのタネ飛ばし大会
をはじめ、様々なイベントで盛り上がる。
さくらんぼ園では、有料の食べ放題がにぎわう。
この季節、東北圏内では、山形県に親戚を持つ
人々を中心に、チェリーの贈り物が飛び交う。
「佐藤錦」の高級品になると、1パック1万円である。
そんな高いもん、自分から買うことはないが、
たまにおすそわけにあうと、そりゃ、うまい。

その産地の「寒河江」と、隣の「東根」だが、
JR駅の東根駅が、とうとう、
さくらんぼ東根」駅と改名された。
大胆である。
ちょうど、博多駅が、「めんたいこ・博多駅」
と改名されるようなもんである。
山形が、さくらんぼに入れ込む情熱がわかる。
さくらんぼ王国 と言ってもいい。

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