石の2 柳川藩に嫁いだ伊達家の姫


福岡市や北九州市は、日本海の玄界灘に面しているが、
柳川101 同じ県内でも、柳川市は有明海に面している。
ここがなかなか魅力的で、風土がおもしろい。
福岡の天神から、西鉄の特急に乗ると、1時間で着く。
駅舎を降りるとわかるが、のどかな田舎町である。

水郷の町として有名である。
町の中を縦横に狭い水路が巡り、そこを船頭さんが
小舟で案内してくれるのが、観光名物になっている。
水郷沿いの民家はどこも、庭に四季の花を植え、
船頭さんは民謡を歌ってくれ、時に
「あれがジョン・レノンと結婚したオノ・ヨーコの
実家です」などと案内してくれる。

この水路、実は、戦後すぐには、ドブ川になっていて、
御花 いっそのこと、埋めてしまおうという話になったが、
ある市職員ががんばって、復活させたという経緯がある。
その話を「千と千尋」で有名な宮崎駿監督が
昔、実写のドキュメンタリー映画に仕立てている。
柳川掘割物語」という作品である。

水路の終点にあるのが、「御花(おはな)」という料亭。
江戸時代、柳川の藩主・立花氏の別荘だった
廊下には国宝級の鎧、兜などが展示してあるが、
決して敷居は高くない。ツアー客はたいていここで昼食を取る。
名物が「ウナギのセイロ蒸し」である。
ウナギ好きならば、これを食わぬ手はない。

座敷の目の前には、池の広い和風庭園が広がっているが、
せいろ蒸し 仙台の人には、その景色に注目して欲しい。
実は、仙台の「松島」を模しているのである。
立花家の三代目藩主に嫁いできたのが、伊達家の姫君なのだ。
その息子が、宮城を懐かしむ母のために、造園させたという。
孝行息子である。

この近辺の食堂では、有明海の珍味が食わせる店が多い。
ムツゴロウに始まって、ワラスボ、メカジャ、クツゾコ、タイラ貝、
アゲマキ、イソギンチャク。
どれもこれも、グロテクスでありながら、美味である。
特に、二枚貝のアゲマキは、殻のまま焼いて醤油を一滴
垂らせば、これほど美味い貝はないと思う。

御花のすぐ近くに、詩人・北原白秋の生家がある。
有明海103 裕福な商家の、ぼんぼんだったらしい。
通りの先が、干潟に通じている。「沖の端」という。
 川沿いに多くの漁船が係留されていて、川の水は泥色だが、
汚いわけではなく、干潟ゆえの自然の色なのだ。なにしろ、
子供達が、その泥色の川で嬉々として泳いでいる。
川で泳ぐ子供達を久しぶりにみた。

堤防沿いを川の先に歩いてゆくと驚くべき光景になる。
コンクリートの堤防の外側には、延々と泥色の干潟が
水平線まで続いていて、その中を細い水の筋が流れている。
満潮の時には、一面が有明海の海面になるのである。
満潮時と干潮時の海面差、実に7m

トビハゼ 干潮の干潟には、ぼくらが大好きになったスターがいる。
トビハゼである。ムツゴロウの弟分。
これが実にかわいらしい。水たまりから、水たまりへと
えらを使ってヨチヨチと歩いては跳ねる。
1時間、見ていても飽きない。

柳川市観光協会

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