石の2 春の山の雪形


雪形6 九州にいては想像も出来ないことであるが、東北では
春の桜の頃に、雪をかぶった白い山を見ることができる。
その美しさは卒倒するくらいである。

それが5月のGW頃になると、徐々に雪が溶けて
山肌に黒と白のコントラストを刻むようになる。
その溶け残った雪の紋様を見て、土地の人は昔から、
田植えの時期を決めるんだという。
宮城県白石市の農家では、南蔵王の残雪が修験僧の
形になるのを待って、田に水を引き入れたというので、
「水引き入道」という名前が残っている。

東北道を南下して、福島県に入ると、吾妻連峰が車窓から
見えるが、そこには今度は「種植えウサギ」というのがある。
吾妻山の上の方に、なるほど、目を凝らしてよく見れば、
ウサギの形になった白い姿が見えるのである。
江戸時代から、地元の人は、それが現れると、それ!と、
田んぼに苗を植えたのである。

へえ、では各地の同じような例を集めてみようとネットで
検索をかけてみたが、あまりに多すぎてあきらめた。
要するに、九州人には想像もできなかったが、長野県などの
中部地方や、東京以北の東北地方では、どこでも春に
遠くに雪の残る山が見えるのが普通なのだ。
そうなのか。

雪形5 ちなみに、先日の5月のGW期間に、山形県米沢市に、
「上杉祭り」を見に行ってきた。市内の河川敷で、上杉謙信と
武田信玄の「川中島の戦い」を、ボランティアに応募してきた
若者たちが、数百人規模の甲冑姿の武者になって、再現する。
川中島は長野市なのに、なぜ、遠く離れた山形県で?と
思う人もあるが、上杉謙信の頃の上杉は新潟の越後だったが、
謙信死後の上杉は、秀吉や家康に屈服して、会津から米沢へ
次々と領地替えをさせられ、石高を削られながらも、
米沢という狭い土地で江戸300年間、暮らしたのである。
しかも、今年はNHK大河ドラマで、上杉景勝の家老である
直江兼続が主人公になっているので、大変な盛り上がり方だ。
そして、その会場の背景の吾妻連峰の山肌に浮き上がって
いる雪形が、「白馬の騎士」である。つまり、上杉謙信。
春の米沢にとっての、シンボルマークだという。
なんかいいなあ。
(2009年5月)

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