石の2 山形蔵王スキー場の幸せ


仙台に来てから、はや10年。
蔵王3 冬の楽しみは、スキーになった。
最初は、リサイクルセンターでもらった、スキー板で
こわごわ滑っていたが、4年目に変化があった。
流行り始めていた「カービングスキー」というのを、
思い切って買ってからだ。
従来のスキー板よりも短く、両先端がやや丸い。
滑ってみてビックリした。簡単に曲がってくれるのだ。
これなら、ターンも怖くない。
一気にスキーが楽しくなった。
二人して、うわお、楽しい、楽しいと騒いだ。

それに加えて、山形蔵王スキー場を知ったのだ。
古くからある、全国有数の大きなスキー場だ。
カービングスキーで自信を持ったので、
初めて、山形蔵王の上の方まで、ロープーウェーで
登る決心がついたのだが、これがまた意外!

山形蔵王は、山の上の方ほど、初心者向けの
ゆるやかな斜面が多かったのだ。
むしろ、下の山すそほど急である。
ええ?そうなのか!と喜んだ。
しかも、上ほど、雪質も良くて滑りやすいし、
なにしろ、雪山の景色が抜群である。
初心者は、絶対、上に行くべきである。
有名な樹氷もある。

仙台市内から山形蔵王へは、車で1時間半。
朝の8時に我が家を出発すれば、着いて一服した後、
蔵王2 5時間たっぷり滑って、温泉に入って
日暮れまでには帰って来れる。
行きはぼくが運転するが、昼食にはぼくはビールを
飲むので、帰りは優子が運転する。
休日の過ごし方として、こんな幸せはない。

しかも、最近、スキー客は減少しているという。
つまり、リフトなどに並ぶことが少ない。
ぼくらは最近のスキー風景しか知らないけど、
昔は、どこのリフトも1時間待ちの行列だったという。
それを思えば、いい時期にスキーを始めたもんだ。
あと10年は、夫婦でスキーを楽しめるだろう。
スキーシーズンは、1月、2月、3月である。
雪の降る日は出かけずに、晴れの日だけ行く。
そうすると、上からは、朝日連峰、月山山脈、鳥海山が
遠くに連綿と白く見え、息を飲むほどの絶景である。
だいたい、ぼくらがスキーに行くのは、滑るよりも、
そういう雪景色に感動したい方が優先する。

それにしても、不思議なのは、
こちらに来て知り合った、こちら生まれの人で、
「スキー?やったことない」という人が意外に多い
ことだった。これにはビックリした。
雪国の人はみんなスキーをやるもんだと思っていたが、
そうでもないらしいのだ。もったいないなあ、と思う。

ちなみに、福岡の人が地元で行けるスキー場というのが、
ただ一つ、佐賀県の天山にある。
福岡に居た頃、スキー場というのはどんなものかと、
一度だけ見物に行ったことがあるが、
リフトは2基だけ、全長500mの単調な急坂のみ…。
蔵王1 ロープーウェイだけで4つ、リフトなら30基、
最長5キロのコースがある山形蔵王と比べると、
なんと、ささやかで、いじましいことだろう。
それでも、地元のスノーボーダーの掲示板を見ると、
その天山スキー場で、雪が降ったね、質がいいねとか、
明日は行く?などと、言い合っていて、
あのくらいの雪の斜面で、幸せを分かち合っているのだ
ぼくは少し涙ぐむ。

ああ、九州の彼らに、この雄大な山形蔵王で
思いっきり滑らせてあげたい。
でも、そうしたら、もう天山なんてバカらしくなって、
2度と行かないかもしれない。
それも罪作りか、などと思う。
とにかく、山形蔵王スキー場というのは、
山形県民はもちろん、仙台市民の幸せである。
(2005年)


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