石の2 雑煮の夫婦別れ


玉こんにゃく 仙台の汁物は薄味だと思う。伝統的な店ほどその傾向があり、
有名寿司店や、日本料理店、日本旅館などで、たびたび、
ものすごい薄味の味噌汁や、お吸い物に出くわす。

一番わかりやすい例が、おでんの「三吉」である。
ここは、仙台を代表する、有名なおでんの店なのだが、
その汁は、ぼくに言わせれば、ほとんど、お湯であり、
ダシ味がほとんどしない。それでも、妻の優子も、その母も、
おいしいおいしいと食べる。
ぼくが「ダシをけちっている」と悪口を言うと、二人して、
「素材の味が生きている。その繊細さがわからないの?」と反論する。
わからんて。味はしっかり、つけんかい!

仙台で寿司店の人気2位に選ばれた店で、アラ汁を飲んだ時も
びっくりした。やはり、これもダシ味がほとんどしない。
 福岡でこの店が営業した場合、即、つぶれると思う。
そして、こちらの母が作る味噌汁も大変な薄味である。
最初はガマンしたが、九州人にはどうも、おいしくない。
きのこ だもんで、ぼくの味噌汁は、別に自分で作っている。 

雑煮の夫婦別れ」という言葉がある。
正月に食べる雑煮ほど、土地々々で味や具の違う料理はない。
東は四角い切り餅、西は丸餅。
東京は醤油味で、京都は白味噌味。
四国の香川では、アンコを入れるという。そこまで違うと、
「お互いに、好きな雑煮を作って別々に食べましょう」
ということになる。正月の雑煮というのは、それほどに土地別の
こだわりのある食べ物であり、仲のいい夫婦ですら、出身が違えば、
別々の椀をこしらえることになるものだという話である。

しかし、宮城県のおふくろの味が、思わぬ出会いを生んだ
という有名な話もある。テレビでやっていたが、
大山のぶ代と、砂川啓介夫婦のことだ。
大山のぶ代といえば、ドラエモンの声優として有名な女性。
最初から声優ではなくて、元々は俳優を目指した劇団員だった。
その彼女のアパートに、徹夜麻雀をしに集まってくる面々がいて、
その中に、後にNHKの「体操のお兄さん」として人気者になった
砂川啓介がいた。最初は、お互いに興味がなかったらしい。

ところが、ある徹夜麻雀大会の朝に、料理上手の大山のぶ代が、
みなさんへの朝食に、ご飯と味噌汁を作って出した。
そして、その味噌汁を一口飲んだ砂川が、
大山のぶ代 「なんてうまい味噌汁だ!」と叫んだという。
「こんな、うまい味噌汁を作る人に、
初めて出合った」
「え、あらそう!?うれしいわ」
それで二人は急速に親密になった。
それから会話を交わすうちに、わかったのだが、
二人とも生まれは東京なのに、
実は、どちらも母親が宮城県人だったのだ。
つまり、のぶ代がどんな料理を作っても、
啓介にとっては、それがおふくろの味であり、
懐かしい味付けだったのだ。
そして、それで意気投合した二人は、
やがて結婚した。

それを思えば、ぼくらは食文化の全く違う、九州と東北。
2004年で、銀婚式つまり、結婚25年を迎えるが、
よおやっていると思う。エライ!

■仙台味噌・佐々重のHPによると、北海道の昆布は日本海から
京都に運ばれて、鰹節文化との出会いもあり、出汁文化が
生まれたが、仙台には昆布文化がなく、出汁文化がなかった。
その代わりに、熟成した仙台味噌が生まれたそうです。

石の3 元に戻る