石の2 流行といえば、もつ鍋ブームもあった


もつ鍋1 ぼくらが仙台に来て、しばらくした2000年の
頃だったが、突如、降って湧いたように、
東京を中心に、もつ鍋のブームが起こった。
もつ鍋といえば、鶏などでダシを取ったスープに、
和牛の内臓をニラやキャベツと一緒にアルミ鍋で煮て、
塩と醤油で味をつけた、博多名物である。
ぼくも福岡に住んで、初めて知って、
スープが美味くて、すっかり、好物になった。

しかも、これがまた安い。五百円から七百円くらい。
材料がモツと、キャベツとニラだけだから安いのは
当り前で、福岡では、その専門店というのは元々なく、
居酒屋のメニューとしての、一品だった。 
それが、どういうきっかけか、突如として東京で、
単品でブームになり、もつ鍋専門店が次々と現れた。
安い旨い、栄養がつくというので、女性客が目をつけて、
一緒に男性客も女性共々、押し寄せる現象になった。

が、このブームも東京では2年くらいで、すぐ下火になった。
あっという間だった。あれほど広がった、もつ鍋専門店も
もつ鍋2 次々に火が消え、衣替えをしてなくなった。
あれは何だったんだろうと思っていたら、ここにきて、
また、東京でブーム再燃の兆しがあるという。(2006年)

仙台では、もつ鍋専門店というのは、今までなかったが、
ここにきて、博多系のもつ鍋専門店が出来たと、
夕方のテレビのローカル・ワイドでやっていた。
塩味で、スープが絶品だとレポーターが言っている。
すると、スタジオの女性アナウンサー達が
「でも、もつ鍋といえば、普通、味噌味ですよねえ」
と声を上げている。おいおい!違うだろ!
すると、司会のさとう宗幸が、首をかしげながら、
「博多には、味噌味なんてないよ」とポツリと言った。
さすがに、日本全国を歩いているだけのことはある。
「そうだろ!」と、ぼくもテレビの前でうなづいた。

どうも、彼女らは、「モツ煮込み」と「もつ鍋」を混同して
いるらしいのだ。モツ煮込みといえば、
関東では居酒屋の酒の肴として、一般的なもので、
モツをコンニャクの端切れと共に味噌で煮込んだ
チープな一品で、小鉢で出てくる。これはこれで、
実にうまいもんで、ぼくも東京時代に、仕事帰りの
居酒屋では、まず注文するのがこれだった。
(これに、カレー粉を隠し味で加えると、さらにうまい)

もつ鍋は、それと違って、あくまで鍋物である。
目の前でグツグツ煮るし、キャベツの量がとても多い。
だから、野菜の甘みも加わって、スープが絶品である。
塩味というか、多少の醤油味なのだが、
このスープの旨さが、もつ鍋の醍醐味なのだ。

だから、それに味噌を加えると、味が台無しになる。
ところが、仙台のスーパーでは、予想されていたこと
ではあるが、味噌味のもつ鍋のパックが売られている。
東日本の嗜好だといえば、それまでだが、
とにかく、汁物には、すぐに味噌味が出廻るのだ。
もつ鍋にも、とんこつラーメンにも、長崎ちゃんぽんにも、
味噌味のバージョンを作ってしまうのである。
お願いだから、味噌味にしないで、と言っても、
とりあえず、味噌味のメニューを加えないと、
寝起きが悪いのだという。

そしてついに、2018年になって仙台駅前パルコに
もつ鍋専門店が出来たので行ったところ、味噌味が主で
醤油味が従だという。ウソだろうと言ったら、従業員が
ここは博多が本店ですと言うのである。調べてみると、
なんと、実際に博多でも味噌味が普及していたのである。
もつ鍋も地獄に落ちたと思った。
(2018年)

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